【緊急インタビュー】さくらインターネット株式会社 新社長に聞く!

さくらインターネット株式会社
新社長に聞く!双日との資本提携と今後の戦略

取材・文:野本幹彦  写真:津島隆雄

 

本業であるデータセンターやレンタルサーバーに注力することで
さらに付加価値の高いサービスを提供していく

田中邦裕氏
さくらインターネット株式会社
代表取締役社長兼最高経営責任者
田中邦裕氏

2007年11月27日、さくらインターネットは2007年4月から2007年9月までの中間期決算の発表で債務超過であることを公表し、代表取締役社長の笹田亮氏の辞任を発表した。同社のデータセンター/レンタルサーバー事業は非常に好調であるため、このニュースは驚きとともに伝えられ、業界内にも大きな波紋を呼んだ。この発表と同時に、これまで取締役 最高執行責任者(COO)だった田中邦裕氏が代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、今後の舵取りを迫られることになった。さくらインターネットの今後の事業展開と戦略、展望を、田中新社長にうかがった。

 

不採算の事業を減損し好調な本業に集中する

──さくらインターネットは、個人向けの「さくらのレンタルサーバ」はもちろん、「専用サーバ」や「専用サーバPlatform」などの法人向けサービスも順調です。それにしても、2007年11月のあの発表は非常に驚きでした。

田中 今回の債務超過は、データセンター/レンタルサーバー事業に関わるものではありません。レンタルサーバーは、月に約4千~5千件のお客様が純増(新規契約数-解約数)となって、年間で約5万~6万件ずつ増えてきています。2007 年3 月期の決算では、レンタルサーバー事業を含むデータセンター運営事業で前期比157.1%の売上増となっており、データセンター運営事業自体は非常に好調です。債務超過発表後も、解約が大きく増えたことはなく、お客様に評価していただいています。

──2007年11月発表の業績予想の修正までの経緯と社長交代の経緯を教えていただけますか。

田中 当社は、本業であるデータセンター/レンタルサーバー事業以外にも、オンラインゲーム事業、ソフトウェア開発、動画配信事業、海外事業などのさまざまな事業を行ってきました。これらのうち、オンラインゲーム事業において、有料会員数が当初の予測よりも低く推移したため、将来の収益見通しおよび回収性を勘案し、固定資産を減損として計上いたしました。
このタイミングで私が社長を引き継いだのは、これまでのさくらインターネットのやり方を継承していくためです。私と前社長の笹田は、元々2人でさくらインターネットを創業し、二人三脚で事業を展開してきました。ある意味、創業者が当社の提供するデータセンターやレンタルサーバーの事業に深く関わり過ぎていたため、2人が同時に辞めてしまうと今後の事業継続性とお客様へ与えてしまう不安などの影響は計り知れない。創業者のカラーが強すぎた面は反省すべき点ですが、さらに事業を発展させていくために、現状では私が会社に残るという選択をしました。今後は社員全員でモノを作り上げる体制に変革させていくことに注力したいと考えています。

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各事業ごとの対応に加え双日との資本提携も行う

──減損となった各事業に対して、どのような対応をとられているのでしょうか。

田中 状況を打開するためには、“マイナスとなった事業を継続するか”と“マイナスをどう回復していくのか”という2つの観点があると思います。前者の事業の継続に関して、まずソフトウェア開発を行っていた連結子会社(株式会社カイロス)を2008 年1月18 日に売却しました。そもそも我々がソフトウェア開発事業を行っていたのは、SaaSをはじめとする自社で開発したソフトウェアのレンタルなどを考えていたことがあります。しかし、カイロスに関しては、サービス提供がメインの当社とともにSaaSなどに力を入れるよりも、ソフトウェア開発の会社とともに利益を追求していったほうがよいのではないかと判断しました。

──ソフトウェア開発会社を売却することによって、SaaS などに対する事業計画も方向転換したということでしょうか。

田中 SaaSに対する戦略のなかで、我々も役割を担っていくという考え方は変わってきていません。そのなかの位置付けが変わってくるということですね。
我々のデータセンターや専用サーバーなどのお客様に対して、自分達だけでソフトウェアを開発して提供するのではなく、多くのSaaSベンダーのみなさまと協力しながら提供していくという形になります。

──オンラインゲーム事業については、一般のユーザーが非常に心配していると思われますが、継続されるのでしょうか。

田中 『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン アングマールの影』などのオンラインゲーム事業については、従来と変わりなく引き続きご利用いただけますのでご安心いただければと思います。しかしながら、オンラインゲーム事業だけに限らず、当社の事業全般について、それぞれの事業の採算性を厳しく精査していくつもりです。今後は全社的に抜本的な事業構造改革を進めていきたいと考えています。

──海外事業に対する今後の展開も教えてください。

田中 海外事業は、おもにこれまでアメリカと中国で事業を展開していました。アメリカの事業は、ゲームの翻訳などの本業とは少し離れた分野であるので、これらの事業に関してはコストを下げるようにしていきます。中国ではデータセンター/レンタルサーバー事業を展開しているのですが、技術に関しての問題はないものの、市場性の違いから日本と同じ販売戦略では成功できないという側面があります。そのため、しばらくは業績が思わしくなかったのですが、現地法人化を進めて販売戦略を見直すことによって、単月黒字も出てきているので、これからはプラスに転じていくのではないかと考えています。
これらの各事業のそれぞれをしっかりと整理したうえで、もう1つの“マイナスをどう回復していくのか”という問題を解決するために、総合商社である双日株式会社が第三者割当増資を引き受けてくださることになり、2月13日には約10億円の新株発行の払込手続きが完了いたしました。これにより双日株式会社は株式の約30%を保有する当社の筆頭株主となっています。

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双日のネットワークと販売力でさらにサービスを拡充していく

──双日と資本提携することによって、さくらインターネットにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

田中邦裕氏

田中 我々のデータセンターやレンタルサーバーの事業では、最初はコストパフォーマンス重視で利用いただくお客様がほとんどですが、その後はサービスの品質面でもご満足いただいています。多くのお客様に満足いただいている事実が、新たなお客様が当社のサービスをご利用いただくきっかけになっているのではないかと思いますが、ウェブや雑誌などの媒体に紹介していただいたり、多くのプロフェッショナルな方の絶大なるご支持をいただいているのも大きいですね。しかし、「専用サーバ Platform」などの運用・保守などに関わるサービスを展開し、現在増えてきている一般企業のアウトソーシング需要に応えるためには、これまでの顧客基盤だけでは少し弱い部分があります。販売チャネルを増やし、ソリューションとしてサービスを提供していくのは、商社の得意分野です。双日には半年以上前から声をかけていただき、緩やかな資本提携をお願いしようと考えていたのですが、債務超過を補うためにも今回の約10億円の資本提携となったわけです。

──総合商社であるから、大きなメリットもあるということですね。同業他社との提携やファンドの利用は考えなかったのでしょうか。

田中 同業他社やファンドのみなさまからも資本提携などのご提案を多数いただきました。しかし、将来的に次のステップに上るために同業の方と手を組むことはあっても、現状ではデータセンター運営の事業構造を大きくは変えたくないと考えています。本業を立て直すというのであれば、ファンドのみなさまの手を借りることが考えられますが、今回は違うのではないかと考えました。

──双日グループでは、双日システムズ株式会社がデータセンター事業を行っています。一方で、この双日システムズは、東証一部上場の株式会社シーイーシー(9692.T)の連結対象子会社になっています。これらの会社との関連はどうなるのでしょうか。

田中 我々自身が双日グループのデータセンター事業になるというより、双日グループと提携してインターネットサービスを提供することを考えています。現状では、我々のデータセンター事業が、双日のグループ戦略に組み込まれることはありません。双日グループ内には日商エレクトロニクスやSIerの会社がありますが、我々の役割はデータセンターの運用でお手伝いさせていただき、双日グループの販売力やネットワークを活用させていただくことと考えています。

──今回、双日グループから多額の資本が入ることによって、さくらインターネットがもつサービスの特色が損なわれたりはしないのでしょうか。

田中 双日も当社のサービスの特色を高く評価してくれていますので、サービス自体に直接的な影響が出るとは考えておりません。むしろ、双日グループ全体が持つ様々なチャネルから得る相乗効果でプラスの影響がでると思っています。前述の通り、コストパフォーマンスと高いクオリティを両立させ、多くのお客様のご満足の上に成り立っているのが我々のサービスであり、専用サーバーやデータセンターなどへの信頼感にもつながっています。我々の企業価値はこれらを一体でサービスしていることなのです。これらのサービスに関する考え方は、双日にも理解していただいたうえで資本提携をお願いし、また、ご提案をいただいています。あくまでも目的は、今の基盤の上で、双日の得意分野である販売チャネルやソリューションの拡大を行い、売り上げと利益を拡大していくことですから。

──サービス面では影響がないとのことですが、双日から役員が派遣されて社風や仕事のやり方、管理面などが変わることも考えられますが。

田中 双日の役員派遣で大きく変化することはないと思います。むしろ、双日のやり方や新しいやり方でよいものがあるなら、どんどん取り入れていきたいと考えています。他の会社による“第二の目”があることはいいことであると思いますし、よいものを取り入れるよい機会です。それをプラスに変えながら基本的な社風は変えずに頑張っていきたいと考えています。我々が経営して現在の社員に仕事を任せたほうが、双日の連結利益も上がると思ってもらえるような事業運営をしていきたいと思っています。

 

今後もサービスを拡充し競争力を高めていく

──双日との提携によって、販売戦略に大きなメリットが生まれることはわかりました。今後は、データセンター/レンタルサーバー事業に注力していくとのことですが、サービス展開や戦略をどのように立てていますか。

田中 今後もデータセンター運営事業に関してはさまざまな戦略とサービス展開を考えています。また、先日もバックボーンを増強いたしましたが、インフラへの投資も今まで通り積極的に行っていきます。
まず、レンタルサーバーに関しては、我々は運用保守が得意な会社であるので、「専用サーバ Platform」に対して、リモートによる運用保守のサービスやインストールオプションなどを拡充し、対応の質をより高めていくことを考えていかなければなりません。我々の利益の柱のひとつである「さくらのレンタルサーバ」に対しても、新たなプランを追加していこうと考えています。「専用サーバ」についても、機材構成や回線の見直しを行っていきたいですね。これらのサービスに関しては、価格を上げずに付加価値やサービスの質を上げていくことに注力していこうと考えています。
インフラ面に関しては、東京だけでなく、大阪のデータセンターの増強も検討しています。これは、東京以外のデータセンターを拡充していくことで、レンタルサーバーのコスト構造を改善していくことを考えたものです。我々のデータセンターは、もちろんコロケーションで利用されているお客様も大勢おられますが、半分以上のラックが自社のレンタルサーバーで利用していますから。
また、コロケーションなどのデータセンター事業に関しては、来年や再来年くらいからラックの価格競争などが始まり、競争環境が厳しくなってくると予想しています。我々としてはこれまでどおり、安定したラック数を確保しながら、強みである回線の販売を拡充していかなければなりません。価格を上げずに帯域を増強することで、お客様も得をし、我々も競争力を高めるといった戦略を考えています。

──東京以外のデータセンターを拡充するのは、将来的なディザスターリカバリーのサービスも視野に入れているのでしょうか。

田中 ディザスターリカバリーに関しては、SIerのみなさまが関西などにデータセンターを新設してサービスを提供することに注力しているように感じます。我々は、こういった他社にディザスターリカバリーはお任せして、インフラやデータセンター、レンタルサーバーなどの単体のコストパフォーマンスを上げていくことに注力するのが使命だと考えています。もちろん、運用保守などの付加価値のあるサービスを作っていくことは行いますが、現時点で我々は下流からサービスを拡充していくことを考えています。もちろん、双日との提携のなかで、提供できるソリューションの幅が大きく広がることは考えられますが、現状では予定していません。

──最後に読者にメッセージをお願いします。

田中邦裕氏

田中 今回の件でお客様に心配をかけてしまったことは、非常に申し訳ないと思っています。我々は、お客様から“信頼”という、とても大切なものをいただいており、これはお客様と当社を結ぶ大きな絆です。債務超過を発表したときも、「さくらインターネットは大丈夫か」といったブログなどを拝見すると、非常に好意的な内容で書いてくださっている方が多く、本当にご心配をおかけしてしまったなと痛感いたしました。この厚い信頼に応えられるよう、今後はさらなる付加価値と質の高いサービスで、少しでもご恩返しができればと思っておりますので、今まで以上に、さくらインターネットを応援くださいますようよろしくお願いいたします。

──ありがとうございました。

 

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