【データセンターコンファレンス2016 Autumn】特別講演レポート:データセンター構築・運用のカギを握る人材マネジメント

[特別講演レポート]データセンターコンファレンス2016 Autumn
データセンター構築・運用のカギを握る人材マネジメント

データセンターを運用するのは「人」だ。しかし、ファシリティやITインフラの運用を担う人材の育成に悩む企業は多い。日本データセンター協会(JDCC)の9ワーキンググループ(WG)/2グループの中の1つ、「人材マネジメントWG」では、6年にわたりこのテーマに取り組み、いくつかの成果が実を結んでいる。データセンターコンファレンス2016 Autumnの特別講演に登壇したJDCC人材マネジメントWG 副主査・研修塾頭の渡辺聡美氏が取り組みと成果について紹介した。

text:柏木恵子
photo:河原 潤

データセンター運用で重要なのは「人」

写真1:JDCC人材マネジメントWG 副主査・研修塾頭/富士通エフ・アイ・ピー 渡辺聡美氏
写真1:JDCC人材マネジメントWG 副主査・研修塾頭/富士通エフ・アイ・ピー 渡辺聡美氏

 データセンターの重要度が増している中、そこで重要となるのはテクノロジーだけではない。データセンターはシステムを止めないことが使命だが、データセンターを運用するのはあくまで人で、そこからさまざまな問題も発生する。

 渡辺氏は、データセンターの運用を構成する要素について、「人を中心に知識・技術、プロダクト、プロセス、パートナーがあり、それぞれがつながり合っている」とし、人材マネジメントとは、「これらのつながりをマネジメントすること」と説明した。

 「人は『他者から認められたい』という欲求を持っていて、それが満たされると自分の能力を引き出し、創造的な活動に対する意欲が生まれる。しかし、データセンターの運用を支える現場では、さまざまな誤解や厳しい評価に悩まされていることが多い」と渡辺氏。誤解や厳しい評価とは以下のことだ。

●運用は決められたことだけやればいいのだから、誰でもできる、下流/底辺の仕事
●インシデントがなくて当然(褒められることも感謝されることもない)
●インシデントがあれば、糾弾される

 「このような評価を受けている状況で、パフォーマンスを発揮するのは難しい」と渡辺氏は指摘。運用担当者のモチベーションを上げるには、インシデントのない状態の裏には、ナレッジと人々の工夫や努力があることを理解してもらい、互いを尊重し認め合う風土が必要だと強調した。

 「運用に従事するさまざまな立場の人のES(Employee Satisfaction:従業員満足度)を考えることによって、一人ひとりが智恵を出すようになり、その積み重ねが新たな価値を生み出す。それが顧客満足度向上につながり、安定した高い品質でのサービス提供につながるというのが、人材マネジメントの考え方だ」(渡辺氏)

人材育成ガイドラインと研修講座

 この考え方に基づき、JDCCの人材マネジメントWGではさまざまな施策を展開している。その1つが、ITSS(ITスキル標準)をベースに制作した「JDCC人材育成ガイドライン」だ。

 同ガイドラインは、スキル/キャリアの診断評価、OJT(On-the-Job Training:職場での実務による従業員のトレーニング)の計画策定、さらに業務を通じた一連のスキル習得の流れをまとめたもので、JDCCの会員企業はWebサイトからダウンロード可能となっている。WGでは定期的に改訂を行っており、現在の最新版は2016年5月発行の第2.4版となっている。

 もう1つは、JDCCの研修(運用基礎技術習得講座)で、「データセンタ運用プロフェッショナル育成塾」(図1)を2014年度に開講している。こちらは3段階のスキルレベルがあり、スキルレベル1、2では、教育事業を行っているJDCC 会員およびグループ会社から、会員向け研修講座を提供している。「データセンターの運用に携わっていると外出が難しいことも踏まえ、eラーニングも用意している」(渡辺氏)

 スキルレベル3は、事例ベースのサービス品質管理講座である。JDCCの各WGの成果を活用して、少人数の演習形式で事例検討を行う講座を2014年5月から定期的に開催している。5日間のコースだが、データセンター運用担当者が5日間連続で職場を離れるのは難しいため、1カ月に1日、5カ月かけて習得する。「特に力を入れているのは、インシデント再発防止のための手法。丁寧に説明し、演習で実践する力を養ってもらう。また、最新データセンター見学も行っている」(渡辺氏)

 データセンターではファシリティとオペレーションが縦割りになり、自分の専門以外の知見を得る機会があまりない。そこで、JDCCのワーキンググループの中から「ファシリティ・スタンダードWG」「環境基準(PUE測定)WG」「セキュリティWG」「ファシリティ・インフラWG」「ネットワークWG」「環境政策WG」のリーダーから成果の紹介をしてもらい、効率よく全容を理解できるような機会も設けている。

 スキルレベル4は、マネジメントに携わるリーダーのための運用レベルアップ講座だ。レベル3講座のフォローアップとして、品質管理の手法をデータセンターに適用することをテーマに演習講座を行う。

データセンター業界全体の価値向上を目指して

 人材マネジメントWGでは、個々や組織の人材育成を越えて、データセンター業界全体の価値向上のために、大きく2つの施策を推進している。

 1つは「人材にフォーカスした『価値向上』の目的設定と施策」だ。データセンターの運用は、誤解されている面がある。暗い、苦しいというイメージを持たれているため、優秀な人材の確保に苦労している企業も多い。「そこで、そのイメージを払拭するために学生向けにデータセンターの見学・勉強会を実施している。普通は入れないデータセンター見学に加え、現場で活躍している若手スタッフとの懇話会も行い、忌憚のない質問も出る」(渡辺氏)

 もう1つは、「『業界コミュニティ』形成の目的・対象範囲の明確化と実施」だ。より“役に立つ”業界コミュニティを目指し、実現の難しい“あるべき論”ではない、現場で実践している実用ノウハウの共有や、管理者の情報収集よりも実務者の情報交換の場としてのネットワークの醸成を図っている。渡辺氏によると、普段は聞けない他社の運用ノウハウの共有と意見交換により、自社に何かを持ち帰れる場として、年に2回、すでに7回開催されているという。

データセンターノウハウの集約と活用促進

 人材マネジメントWGではほかにも、データセンター運用ノウハウをまとめて活用につなげる活動も行っている。大きくシステム障害事例系と、ファシリティ事例系の2系統がある。

 まず、システム障害事例の活用を目指す活動として、JDCC 会員企業のシステム障害事例を基に、人材育成および業務品質向上につながるいくつかの成果物(「障害事例集:104事例集と分析」「オペレータ障害原因分析」「標準手順書・チェックシート作成ポイント集とサンプル」など)を制作した。業界コミュニティなどを通しての紹介やJDCC 研修の教材への展開で、活用と技術共有を推進中だ。

 また、ファシリティ事例の活用を目指して、人材マネジメントWGの各社から諸事例も集め、発生事例や改善工夫・アイデアなどのノウハウ事例集(87の事例を掲載)を制作した。事例から傾向、特性分析を行い、求められるファシリティ人材像、教育・育成などへ展開を行っていく。

 渡辺氏は、「一人ひとりの力には限界があるが、構築・運用のプロとして高品質のデータセンターサービスを提供するために、一緒に活動してほしい」と呼びかけて、セッションを締めくくった。

図1:データセンタ運用プロフェッショナル育成塾
図1:データセンタ運用プロフェッショナル育成塾

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