【データセンターコンファレンス2016 Autumn】基調講演レポート:「Software Defined」インフラ刷新に今、着手すべき理由

[基調講演レポート]データセンターコンファレンス2016 Autumn
「Software Defined」インフラ刷新に今、着手すべき理由

これからのユーザーニーズに即したデータセンターを目指すとき、データセンター基盤のソフトウェア化がポイントとなる。SDN(Software Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)、SD(I Software Defined Infrastructure)といった技術をどうとらえ、設計・構築に生かしていけばよいのか。その本質について、データセンターコンファレンス2016 Autumnの基調講演に登壇した東京大学 情報基盤センター准教授の関谷勇司氏が解説した。

text:柏木恵子
photo:河原 潤

なぜSoftware Definedが必要になっているのか

写真1:東京大学 情報基盤センター 准教授 関谷勇司氏
写真1:東京大学
情報基盤センター 准教授
関谷勇司氏

 日本国内では、データセンターは“場所”を借りて自身の機材を自身で設置するハウジングの意味合いが強い。しかし、最近ではその役割が変化していると関谷氏は指摘し、次のように解説した。

 「ハウジングがなくなることはないだろう。だが、データセンターに必要な機能がクラウドでサービス化したものが登場し、それらを組み合わせてITインフラを作り上げるケースも出始めている。つまり、クラウドが自社サービスを構成する1つの部品となっているのだ」

 続いて関谷氏は、「データセンターのモジュール化」についても言及した。モジュール型あるいはコンテナ型データセンターでは、キャパシティを段階的に拡張することで設備投資のインパクトを抑えることができる。同氏はここで重要となるのが標準化であり、「ハードウェアの標準化」と「指標の標準化」の2つのリファレンスを示した。

 ハードウェアの標準化は、フェイスブックが主導するOCP(Open Compute Project)が有名だ。また、指標の標準化には、PUE(Power Usage Effectiveness)やDPPE(Detacenter Performance per Energy)といった省エネルギー指標がある。

データセンターの中身は意識しなくなる

 このようなサービス化、モジュール化で、ユーザーは「ITインフラのサービスを利用する」という感覚になり、データセンターの中身は意識しなくなる。

 重要視するのは、コストとサービス提供までの迅速さだ。「そのために重要なのが、標準化、仮想化、自動化である。これらの実現に、Software Definedが最適にして不可欠なものとなる」

 Software Defined化が必要な理由はもう1つある。「それは、トラフィックの傾向の変化に追従するためだ。例えば、新しいオンラインゲームのリリースで急激にトラフィックが増えるなど、トラフィックの傾向が大きく変わることもある。その変化に、従来のように専用機材で対応するのは、コスト的にも時間的にも難しい」(関谷氏)

 そうなると、ユーザーにとっての新しいデータセンターは、「建物がある場所に機材を持ち込んで作業をするのではなく、ネットワーク越しに機能をサービスとして利用し、組み合わせて使う場」(関谷氏)へとシフトしていく。

 「今までの設備投資のモデルではユーザーが求める変革の速度に追いつけなくなる。そう感じたら、仮想化+ソフトウェア化が必要となる。このことこそがSoftware Definedの本質だ」(関谷氏)

Software Defined技術の派生・進展

 Software Definedで最初に市場に出てきたのはSDN(Software Defined Networking)である。その目的は自社のサービスが求める「ルールで動くネットワーク」の構築だと関谷氏は述べ、次のように説明した。

 「従来はIPのルールに従って通信が行われるため、その上で可能なサービスを考えていた。その発想を逆転して、やりたいことが先にあり、それをかなえるためにどのようなネットワークが必要かを考えるわけだ」

 関谷氏によると、データセンター内のネットワークは、冗長性と利用効率の両立という通常のネットワークとは異なった要求と特性を持っているという。

 「コンポーネント間にできるだけ多くの回線を通し、アクティブ/スタンバイではなく全部使って、流れるだけの通信を流すネットワークエンジニアリングが望ましい。そのため、SDN、MLAG、MPLS、セグメントルーティングといったインターネットとは異なる通信制御が必要となる。また、トポロジー形態はFATTreeや多次元トーラス構造となる」

 関谷氏は、SDNが注目された後に登場した技術として、SDI(Sof t ware Defined Infrastructure)、NFV(Network Functions Virtualization)、SFC(Service Functions Chaining)、セグメントルーティングを挙げてそれぞれについて説明した。

 SDIはネットワークだけでなくサーバーやストレージを含めたサービスを融合する考え方で、すべての機能をIAサーバー上の仮想マシンとして提供する。

 NFVは、もともとは携帯キャリアが描いた概念だ。専用機器で行われていたサービスを、仮想化を用いて汎用機器で提供する。標準化団体のETSIがアーキテクチャを定義している。オープンソースの「OPNFV」やオーケストレーターの「MANO(Management and Network Orchestration)」も知られている。

 SFCは、ソフトウェアをインストールして実現しているサービスをつなげる仕組みとして提唱されている。カスタマーのフロー単位で通過するパスを変更、オーバーレイでサービスを連結する。関谷氏によると、現在のSoftware Definedは「仮想化+SFC」が大きな流れとなっているという。

 セグメントルーティングは、フロー単位で経路を指定する技術で、データセンター内ネットワークで使われる。OSPFやBGPなどの従来のルーティングプロトコルによって得られたネットワークトポロジ情報を基に経路を計算し、空いているリンクを経由して通信するので、偏りや停滞がない。

図1:SDNのアーキテクチャ
図1:SDNのアーキテクチャ

Software Definedを稼働するハードウェア

 Software Definedでソフトウェアが稼働するハードウェアはコモディティ化したPCだ。近年、IAサーバーの高性能化が進んだため、さまざまな機能を載せることが可能になった。「ただし、CPUの飛躍的な進化に比べると、ネットワークI/Oはまだ十分でない」と関谷氏。そこで、ハードウェアによる性能補助技術として、SR-IOV、DPDK、プロトコルオフローディング、NIC内仮想スイッチ、NetFPGAなどが登場しているという。

 サーバー同士をつなげるにはネットワークスイッチが必要だが、OCP 標準の「WhiteBox Switch」のような技術もある、と関谷氏。これは、OSを自由に入れ換えられるのが特徴で、自社のサービスに適したOSを導入することができる。

 さらに、これもSoftware Definedの1つの形だとして、市場で製品が揃い始めたハイパーコンバージドインフラにも言及。「仮想化に適した機材を垂直統合でパッケージ化したシステムの最新形である。パッケージ単位でのスモールスタートが可能で、ソフトウェアで必要とする機能を実現する」

データセンターのソフトウェア化の本質

 講演の終盤、関谷氏は、データセンターのソフトウェア化の本質として、「迅速なサービス構築」「サービス規模の拡張(縮小)可能性」「資源抽象化によるコスト削減」の3つを挙げた。

 「これらのメリットが得られるなら、ソフトウェア化は有効だ。逆に、メリットが得られない規模や必要のないサービスなら、ソフトウェア化しても失敗する」と関谷氏。この本質を理解したうえでSoftware Definedを適用していけば、これからのデータセンターにとって大きな進歩になるというのが氏の結論だ。

 Interop TokyoのNOCメンバーである関谷氏は、最後に新しいネットワークの検証内容についても紹介した。その1つ、「マルチクラウドファブリック」は、部品としてのデータセンターを巧みに組み合わせてサービスを作り上げるための概念で、2014年から複数事業者によるクラウドエクスチェンジ接続の検証を行っている。

 また、ShowNetとMVNOの3G/LTE回線を直結してIoT向け閉域網を構築した。IoTでセンサーネットワークが普及すると、データを集めるデータセンターと、集めたデータを蓄積して解析するクラウドが異なり、選択の自由がある。両者はきちんと結ばれていなければならないため、IoTを支えるデータセンター技術としてマルチクラウドファブリックという概念が必要となる。

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