インタビュー「ストレージとデータセンターは劇的な変化の最中にある」SNIA 取締役会会長 デイヴィッド・デール氏

SNIA 取締役会会長
ネットアップ 業界標準担当ディレクター
デイヴィッド・デール氏 David Dale

ユニバーシティーカレッジロンドン(UCL)で応用物理学士号を取得した後、IT業界で、データセンター/ストレージ分野のテクノロジーエバンジェリストとしてキャリアを重ねる。2013年10月に非営利業界団体SNIAの会長に就任。所属先のネットアップ(NetApp)でも、業界標準担当ディレクターとして標準化活動の推進に携わる。

データセンターのITインフラを形成するサーバー、ストレージ、ネットワーク。なかでも近年は特にデータの格納・管理基盤たるストレージの進化が著しく、データセンター全体の進化に大きく寄与している。米国に本拠を置く非営利業界団体SNIA(Storage Networking Industry Association)の会長を務めるデイヴィッド・デール氏に、来日のタイミングでストレージ分野の最新技術潮流を聞いた。

interview&photo:河原 潤(本誌編集長)

クラウドがストレージ管理に与える影響

――SNIAという業界団体が行う主な活動について簡単に教えてください。

デール●SNIAは今から19年前の1997年に米国のストレージベンダーが中心となって発足した、ボランタリーベースの業界団体である。名称のとおり、ネットワークストレージの価値と活用のしかたについて領域ごとに研究を行うことと、そこでの成果を基に広く使ってもらうよう啓蒙することを目的にグローバルで運営している。

 活動の領域は子細にわたるが、大きく分けて4系統ある。ストレージにまつわる標準規格の策定、ストレージ製品相互接続の確認・認証・適合テスト、新技術に関する普及推進活動、ベンダー中立の立場からの啓蒙・教育・情報提供活動(画面1)の4つだ。

画面1:SNIAのWebサイトでは、Webキャストやプレゼンテーション資料などが多数公開されている(http://www.snia.org/forum/csi/knowledge/webcasts

――メインとも言える標準規格の策定では、クラウドストレージ標準の「CDMI(Cloud Data ManagementInterface)」が知られています。現在はどんな状況でしょうか。

デール●CDMIは、2010年4月にバージョン1.0をリリースして6年が経過した。アプリケーションがクラウドを利用する際に必要となるデータアクセスのインタフェースを定義したものだ(create、retrieve、update、delete)。

 クラウドが急速に進化を遂げていた時期だ。策定した後、我々はこれを国際標準として広める必要があると考え、ISOに提出することにした。ISOの認証プロセスには長い期間を要した。各国の関連団体から質問が出され、それらにすべて答える作業があったからだ。1年半前、CDMIはようやくISOによって国際標準規格として承認された(ISO/IEC 17826)。

 最新バージョンでは、OpenStackでAmazon S3のようなクラウドのオブジェクトストレージを扱うためのSwiftコンポーネントをはじめ、いくつかのAPIのサポートを追加した。例えば、リニアテープファイルシステムのサポートの一環で、クラウドアーカイブに情報資産をバルク転送できる機能をCDMIに組み込んでいる。さまざまなユースケースを網羅して、開発者がより扱いやすくなるような仕様を含めている。

――クラウドに関しては、CSI(CloudStorage Initiative)という活動もありますね。

デール●CSIは2009年からスタートした。それまで長らくSANやNASのストレージネットワークで行ってきた取り組みを、新たにクラウドでも行うために発足させたものだ。クラウドストレージの運用や活用に関して、ベンダー中立の立場から啓蒙と情報提供を行っている。

――クラウドは今や企業のITインフラの構成要素で欠かせないものとなっています。ユーザーの側でストレージに対するスタンスにどんな変化が見られますか。

デール●企業においてストレージにまつわる意思決定を行う人が、IT部門のストレージ管理者にかぎらなくなっていることが挙げられよう。例えば、仮想化のチームやマイクロソフトのプラットフォームのエキスパート、あるいはDevOpsのチームなどが関与を深めている。したがって、我々としても以前と同様の情報を発信するにしても、より広範な層に対して届けていく必要がある。

 クラウド時代になり、また、ビジネス環境の変化に伴って、ストレージは今日、本当にさまざまなところにインパクトを与えている。管理者や開発者が考慮すべきことも格段に増えている。例えば、OpenStack環境でストレージをどう構築し、機能するのかについては、多くが関心を持っていることだろう。そこでは、SwiftやOpenStackでブロックストレージ管理を司るCinder、共有ファイルシステムのManilaといったコンポーネントの詳細について、極力わかりやすいような説明や資料作りを心がけている。

Software DefinedがDCとストレージを全面刷新する

――クラウドのほかにホットな動向としては、SDN(Software Defined Networking)、SDDC(Software DefinedData Center)あるいはSDI(Software Defined Infrastructure)といったSoftware Definedのメガトレンドがあります。

デール●SNIAでは過去2年間、DMTF(Distributed Management Task Force)と協力しながら、SDDCの構成や特性を明らかにする作業に携わってきた。仮想化された基盤レイヤ、アプリケーションレイヤ、ネットワークレイヤ、ストレージレイヤを、ソフトウェアで制御可能にしていくというコンセプトになる。DMTFのWebサイトには、SNIAと共同執筆したホワイトペーパーも公開されている。

 Software Definedは次世代の管理標準になっていくだろう。DMTFが新しい管理標準規格としてRedfishを2015年8月に公開したのもその一環だ。これは、JSON(JavaScript Object Notation)またはOData(Open Data Protocol)のデータ交換プロトコルに対応したRESTfulインタフェースのAPI群で、ネットワーク、サーバー、DAS(Direct-Attached Storage)のスケールアウト拡張を管理可能にする。SNIAでは、Redfishでスケールアウトストレージの管理機能を補完するために、Swordfishという規格を策定しているところだ。

 SDDCは、データセンターの真のパラダイムシフトだと考えている。従来、それぞれのハードウェアデバイス上で個々に行ってきた管理作業がガラリと変わるからだ。ソフトウェアでデータセンター全体の統一的な枠組みを作ったうえで、すべてをソフトウェアで管理できるようになる。たいへんに意義のある革新だと言える。

――その流れで、SDS(Software Defined Storage)を謳う製品も出てきました。でも、現状を見るに、ソフトウェア制御がベンダーごとにとどまっていて、先行するSDNのようにマルチベンダーで使えるようにはなっていません。

デール●その指摘は正しい。Software Definedの潮流の中で、SDSという呼び方がなされるようになったが、現時点のSDSはまだ各社でバラバラと言わざるをえない。

 とはいえ、ここにきて、ユーザーにとって意義のあるSDSも登場し始めている。いわゆる第3のプラットフォーム(クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャル)のアプリケーションへの対応を強く考慮した製品である。スケールアウトやアジリティ(俊敏性)を高いレベルで確保して、そうしたアプリを迅速に展開できるようになりつつある。

今年こそフラッシュストレージ元年になる理由

――この分野で頻繁に耳目にするようになったホットテクノロジーと言えばフラッシュストレージですね。2年前も、1年前も「今年はフラッシュ元年」だと言われていましたが、業界の専門家の皆さんに聞くと「今年こそ本当にそうなる」と(笑)。デールさんから見てどうなのでしょう。

デール●今年で最後だ(笑)。3年前、データセンターにおけるメインストリームのストレージが何なのかと聞いたら皆、ハイブリッドアレイだと答えた。HDDとフラッシュ/SSDのキャッシュを組み合わせたものだ。だが今は違う。オールフラッシュ製品が急増して、HDDをどんどん置き換えている(図1)。

図1:フラッシュストレージの種類(出典:SNIA)

 数字でも示そう。このグラフはSAS規格のHDDとTLC NAND規格のSSDの容量単価分岐点の推移と予測を示したものだ(図2)。HDDが赤のラインで、SSDが青のライン。グラフにあるように、2016年の後半、1TBあたりの価格がHDDとSDDとで同じになる。

図2:SAS 規格のHDDとTLC NAND 規格のSSD の容量単価分岐点の推移と予測(出典:SNIA、ネットアップ)

 注目はオールフラッシュ製品だ。コストがまだ割高でも、性能とスペース効率でHDDやハイブリッド製品を大きく上回る。また、各社の製品とも、データ圧縮や重複排除ですぐれた機能を提供している。SAS HDDだけでなく、SATA HDDと比べても両社のギャップがどんどん縮まっていくと見ている。

――容量単価が大幅に下がることで、フラッシュを選ぶモチベーションが一気に高まりますね。では、運用保守面でのメリットはどうでしょうか。実際にストレージを運用する管理者にとってはそこが重要ですよね。

デール●フラッシュで運用負荷は明らかに軽くなる。特にキャパシティプランニングでは、我々の予想以上に大きなメリットが得られる。HDDストレージの場合、管理者は、だいたいどれぐらいのデータがどのディスクに入っていて、どれぐらいのキャパシティがあればアプリケーションのリクエストをうまくさばけるのかを十分に検討しなければならなかった。HDDの処理が遅いからだ。それがオールフラッシュになるとパフォーマンスに十分な余裕があるので、細かなことを気にせずにQoS(Quality of Service)を確保してストレージサービスを提供できるようになる。

――ディスク自体の正確な寿命予測もフラッシュに分がありますね。かつてネガティブ要素として書き込み制限が指摘されていましたが、保証されている耐久時間をHDDよりも正確に予測しやすいと思います。

デール●そう、システムレベルでの技術革新も進み、フラッシュドライブ/SSDの寿命はこれからも伸びていく。あとは、持ち前のインラインのデータ圧縮や重複排除を上手く活用することで、そもそもフラッシュに書き込む機会も減らすことができる。

 一方、HDDの場合、寿命はディスクごとの製造バッヂから予測するしか手はない。大量のHDDの中でどのディスクが壊れそうかは統計情報を基に推定するしかないわけだ。

 このようにフラッシュストレージがこの先広範に普及していく条件が整ってきた。将来はプライマリのティア1にとどまらず、バックアップやアーカイブ用途でもフラッシュへの置き換えが進み、オールフラッシュデータセンターの時代がやってくるだろう(図3)。

図3:将来はオールフラッシュデータセンターへ(出典:SNIA、ネットアップ)

ポストフラッシュ=永続メモリ技術の可能性

――フラッシュの次と目される不揮発性メモリ技術の永続メモリ(Persistent Memory)についてはどのぐらいのポテンシャルを見ていますか。

デール●永続メモリは、おそらく3~5年先に利用可能になるだろう。実現のための候補技術はすでにいくつか存在する。

 永続メモリは、コンピュータアーキテクチャの歴史上、今までにない大きな変化をもたらす可能性がある。レイテンシはDRAM(Dynamic Random Access Memory)のレベルに接近する。これは今のフラッシュの10分の1程度だ。IOPS(1秒あたりのI/O処理性能)はフラッシュと比較して10~100倍まで向上する。ここでもDRAMに近づく。イメージとしては、若干遅いメインメモリ、あるいは超高速なディスクストレージといった位置づけになる。

――3~5年先とは、そんなに遠い話ではありませんね。5年前、フラッシュを企業の大規模ストレージで使うことは非現実的でしたが、今はオールフラッシュ製品がたくさん出揃っています。フラッシュと同様、永続メモリを採用したストレージも今後、ティア1のトップエンド領域から入って容量単価が下がるごとに徐々に普及していく道をたどるのでしょうか。

デール●そうなると思う。ただ、やはり実用化に至るまでハードルは高く、いくつかの部分で解決が必要になる。とりわけ、ストレージデバイスとしての相互接続性を最適化しないといけない。現状のインターコネクトは低速でそこがボトルネックとなってしまう。

 もう1つ、ソフトウェアの最適化も欠かせない。現在のストレージ管理ソフトウェアは、現行のディスクのレイテンシを考慮に入れたうえでの設計になっているので、そこが根本的に変わらないと永続メモリのポテンシャルを十分に引き出せない。

 この技術は、我々や標準化団体のチャレンジとして取り組まれている。新たな相互接続技術やレイテンシをうまく抑える手法などについてだ。インターコネクト/相互接続に関しては業界団体のNVM Express(Non-Volatile Memory Express)で仕様策定が進んでいる。NVMe SSD仕様はその最初の成果だ。また、インターコネクトでのスケールアウトを可能にするオープンなソフトウェアの開発もここで行っている。

 我々SNIAの役割は、啓蒙と、永続メモリに特化したNVMプログラミングモデル(API実装の前段階)の作成だ。2015年3月にNVMプログラミングモデルのバージョン1.1をリリースしている。ここでは、ブロック/ファイルモードの追加、メモリマップドファイル(図4)を定義している。

図4:SNIA NVMプログラミングモデルのメモリマップドファイルの概念図(出典:SNIA)

アーカイブ用のコールドストレージにも革新

――高速ストレージ技術の一方で、バックアップ/アーカイブ用ストレージの動向はどうでしょう。「コールドストレージこそがホットトピック」だとも聞いています。

デール●ユーザーから今後は決してアクセスされない、ないしはめったにされないデータへの適切な対応は重要であり、不可欠だ。今の企業ではそういったデータが日々膨大に蓄積され続けており、長期間にわたり安価に安全にデータを保管していく必要がある。そんなコールドストレージへのニーズに対し、Amazon Glacierのようなクラウドで利用できるコールドストレージサービスも出てきている。

 我々も本腰を入れている。ここではSNIA日本支部(SNIA-J)が大きな貢献をしている。SNIA-Jはコールドストレージ技術分科会を立ち上げて、コールドストレージで使用する記憶媒体(図5)やユースケースの定義、タクソノミー(Taxonomies:分類方法)に関して研究を行っているところだ。

図5:アクセス頻度、データ総容量、データ作成後の経過時間とストレージ記憶媒体の関係(出典:SNIA)

――SNIA-Jのコントリビューションの1つが、国立情報学研究所(NII:National Institute of Informatics)学術ネットワークでのアーカイブプロジェクトですね。

デール●そう、特にNIIのような学術研究の分野では、研究データを改竄できないようにし、なおかつ、長期保存かつ低コストで保存するというニーズがある。ほかにも医療や法律など広範なビジネス領域で求められており、ストレージベンダー各社の研究開発ロードマップの中には、コールドストレージが必ず含まれている。

――バックアップやアーカイブとは少し違いますが、IoT(Internet of Things)で生成された膨大な生データに対してはどんな格納・管理をしたらよいのでしょうか。

デール●IoT対応のストレージといった明確なアプローチがまだ定まっていないと思う。IoTを通じて生成された膨大なデータに分析をかけ、その後格納するのに、新しいストレージが必要なのか、それとも既存のストレージでも対応できるのかを見極めるには、もう少し時間がかかるだろう。もちろん、このメガトレンドを我々としても引き続きウォッチしていくつもりだ。

CIOやマネジャーも、SNIA情報ライブラリの活用を!

――データの格納・管理において、セキュリティは絶対に避けられない課題です。ストレージのセキュリティ標準に関してはどのような活動が進んでいますか。

デール●我々はストレージセキュリティを2タイプに分けて考えている。1つは、「Data At Rest」で、すでにストレージに格納済みのデータに対するセキュリティだ。もう1つは、「Data In Motion」で、こちらはネットワークやインターコネクトを移動中のデータに対するセキュリティである。

 SNIAの取り組みの一例を挙げると、ITTFが策定したTLS(Transport Layer Security)におけるストレージ関連の仕様をISOに申請済みである。また、CDMIのセキュリティ関連項目で、Data At RestとData In Motionの両方の状態における暗号化・鍵管理に関する整理を行った。こちらは、サイバーセキュリティに関わるISO27040への対応を主眼としたものだ。

 今後としては、例えば、EUでデータプライバシーの法律が制定されたので、それがストレージに関してどのような影響を与えるのかといったことを早期に発信していくことを検討している。

――自社でデータセンターやストレージ、セキュリティの戦略立案にあたるCIOやITインフラ担当マネジャーに向けて、最後に何かアドバイスをください。

デール●ストレージとデータセンターは劇的な変化の最中にある。この分野に限った話ではないが、まずは日々の情報収集である。ITプロフェッショナルに加えて、エグゼクティブやマネジャー層に向けても、我々はこれからもしっかりと啓蒙・教育活動を継続していく。公開中のプレゼンテーションやウェビナーの中には、エグゼクティブ向けのものもたくさんあるので、ぜひアクセスしていただきたい。

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