NTTPCコミュニケーションズ 門前仲町データセンター

本格稼働する省エネデータセンター

エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ(以下NTTPC)では、「WebARENA」ブランドでハウジングサービス/ホスティングサービスを幅広く提供している。なかでも「WebARENA Symphony」は、自社運営のデータセンターを利用したハウジングサービスとなる。ここでは、門前仲町データセンターを取材した。

文:渡邉利和、写真:津島隆雄

データセンター運営のパイオニア

NTTPCのハウジングサービスは、インターネットブームの最初期にあたる1997年からの長い実績を誇るサービスだ。耐震・免震設計、冷却設備、UPSやガスタービンエンジンによる自家発電設備などは当然として、厳密な入退室管理によるセキュリティ対策や国内最大級のバックボーン回線など、データセンターに求められる要件を最高レベルで満たすデータセンターを運用している。現在運用中のデータセンターのなかでも、最新の設備となる門前仲町データセンターでは、現在注目される省エネルギー設備がいち早く取り入れられた先進的なファシリティを実現している。

門前仲町データセンターの設計が開始されたのは3年ほど前だという。現在に比べれば市場の経済状況が良かったタイミングであり、完成前からすでに何社かのユーザー企業と入居契約を締結していたことから、あらかじめユーザー側のニーズを取り入れた設計ができたという。6フロアで最大、2,000ラック程度まで提供でき、都心型データセンターとしては大規模な部類になる。

最新のファシリティを備えるデータセンター

同センターは、サーバーの高密度実装に対応できる設備として、十分まかなえる電力供給、冷却能力、床荷重を考慮して設計されている。階高5m、フリーアクセスフロアの床下高600mmというサーバールームを6室確保している。各サーバールームのラック数はおおよそ300ラックで、総計で2,000ラック規模となっている。

給電容量はラック当たり4kVAまたは6kVAとなっているが、現状では6kVAが大半を占めるという。事業開始当初は2〜3kVAの要望もあったそうだが、現在のユーザーはほぼ例外なく6kVAを希望するそうだ。床スラブの耐荷重は平米当たり1.5tほどで、この重量を支えるため、ラックも特注品を採用しているそうだ。電力・冷却設備の冗長性をTierレベルでいえば、3+位に相当する設備だという。

運用継続性やセキュリティに関しても、最高レベルの設備を備えて運用している。たとえば、地上レベルに設置された自家発電設備は6000kVAの給電能力がある(写真1)。都市型データセンターとしては大規模なもので、電力会社からの給電が停止し、しばらく復旧が望めないという状況であっても、48時間全設備を問題なく運用継続できるだけの十分な発電能力を確保している。

非常用発電装置
写真1 非常用発電装置
6000kVAの電力供給が可能なガスタービン方式の非常用発電装置。N+1(予定)の冗長構成で、48時間の連続稼働できる燃料を備蓄している。

セキュリティに関しても、要所要所に自動ゲートが設けられており、入館時に貸与されたICカードによる認証を行わないと制限区域内には立ち入れない(写真2)。さらに、サーバールームの入口には高度なセキュリティチェック機能を備えたゲートが備わる(写真3)。このゲートではバイオメトリックス認証を組み合わせて、ICカードを提示した人物が確かにそのカードの発行を受けた正当な利用者かどうかを確認する。さらに、床には重量センサが備わっており、入室時と退室時で重量が大きく異なっていた場合、つまり、不正な機器の持ち込み/持ち出しが疑われる場合には、警告される仕組みになっている。

入退室管理
写真2 入退室管理
エントランスには、有人受付用と再入館用のドアがそれぞれ設置され、セキュリティの確保とともに、利便性にも優れている。
サーバールームのサークルゲート
写真3 サーバールームのサークルゲート
サーバールームの入り口では、指静脈認証と組み合わせて、ICカードと組み合わせて入退室の管理を行う。

省エネルギー化への先進的な取り組み

門前仲町データセンターでは、上記のような先進的なファシリティを備えるだけでなく、電力消費の抑制に有効と目される最新の対策を施している。高効率な冷却設備をはじめ、太陽光発電、LED照明、屋上緑化などのさまざまな設備が導入され、これらを組み合わせて省エネルギー化に対応している。

冷却設備

サーバールームのエアフローは、前面吸気/背面排気を採用し、ホットアイル/コールドアイルのそれぞれに空調吹き出し口/吸入口を配置することで、冷却ファンをラックごとに備えることはしていない。実は、ラックごとに冷却ファンを稼働させるとその消費電力も3~4Aとなり、無視できないレベルになるそうで、これも高効率化のための取り組みのひとつとなっている。

データセンター設備のなかでも特に消費電力が大きい冷却設備に関しては、現時点での最高レベルの効率を誇る空調機としてNTTファシリティーズのFMACS-Vが導入されている(写真4)。サーバールームの空調機は室内壁面にずらりと配置され、二重床のプレナムを経由してラック前面の床下から冷気を吹き上げる(図1)。この機種は「世界一の省エネ性能」とされる空調機であり、中間期から冬期の外気冷熱を活用する間接的外気冷房方式として、低外気温時に圧縮機圧力を下げて運転する冷媒コントロールエコノマイザを搭載する。また、圧縮機だけでなく室内送風機にもインバータ制御を採用し、負荷に応じたリニアな風量制御を実現するなど、現時点ではこれ以上の高効率化を実現するのは困難と考えられるレベルの性能を達成しているものだ。同センターでは、室外機に水冷ユニットを用い(写真5)、屋上の冷却塔で熱交換が行われる(写真6)。データセンター向けとしてもハイエンドに属する空調機であり、価格的には安くはないが、高効率化を追求するうえでは大きな武器になっていることは間違いないだろう。

空調機
写真4 空調機
サーバールーム内の空調には、NTTファシリティーズのFMACS-Vを採用している。総合COP4.4
水冷ユニット
写真5 水冷ユニット
サーバールームの排熱は、いったんサーバールームの外の水冷ユニットで熱交換を行い、水を冷媒として屋上の冷却塔へ運ぶ。
冷却塔
写真6 冷却塔
屋上に設置されている冷却塔。サーバールームの排熱は、最終的には冷却塔で熱交換が行われる。
サーバールームのエアフロー
図1 サーバールームのエアフロー
サーバールームでの標準的なエアフロー。二重床吹き出し天井吸い込み方式。

太陽光発電

同センターでは、省エネルギー対策には多額の投資を行っているが、太陽光発電設備の大規模な導入もそのひとつだろう。太陽光発電は、自然エネルギーを直接電力に変換するため、発電過程CO2の排出がないクリーンなエネルギーだといえる。同センターでは、屋上を利用して大型の太陽光発電パネルを導入しており(写真7)、センターの受付横にはリアルタイムで太陽光発電量がパネルに表示されている(写真8)。

太陽光発電パネル
写真7 太陽光発電パネル
屋上の壁面に設置された太陽光発電パネルは、20kWの発電能力がある。
太陽光発電表示パネル
写真8 太陽光発電表示パネル
発電量を「見える化」する液晶パネル。本日の発電電力量、今までの発電電力量などが表示されている。

太陽光発電については、経産省、環境省、財務省などから、補助金、税額控除や特別償却といった公的な助成などもいろいろあるが、今のところデータセンターで大規模に導入するという話は聞かない。現在、条件が整った際の最大発電量は20kWに達するという。この発電量自体は、単一の建物に設置された太陽光発電設備の出力としてはかなりの規模だといえるが、それでも現在のラック当たりの給電量の標準が6kVAに達していることを考えると、最良の条件であってもラック3本程度の必要量を満たすにとどまる。最大2,000ラックあることを考えれば、微々たる貢献といわざるを得ないだろう。CO2排出量の抑制につながっているとはいえ、経済性を超えた部分の判断がなければ、なかなか導入できるものではない。現状では、エコロジーに取り組んでいるデータセンターであること、そういったデータセンターを利用する顧客は、エコロジーに協力しているといった、意識付けを目的としている段階である。

LED照明の採用

LED照明
写真9 LED照明
館内の主要な部分で、長時間照明を着けている部分で利用されている。

このほか同センターでは、屋内照明の一部にLED照明を採用している(写真9)。LED照明は従来型の電球や蛍光灯に比べて長寿命で消費電力も6分の1から8分の1と少ない点は省エネルギー対策として有望だが、太陽光発電と同様に、現時点では高コストになる点でまだ課題が残る。太陽光発電に比べれば量産効果による価格低下に期待しやすい面があるのは確かだが、それでも現時点では従来型の電球を使い続けるほうがトータルコストでは安価に付く可能性が高い。消費電力量の抑制と引き替えにどれだけのコストを負担できるかは、データセンター側の環境問題への取り組みの積極性に依存する判断ではあるのだが、現時点では、実証実験的な意味合いも込めて最先端設備を導入し、検証を行っているとみることもできるだろう。

環境問題という見地から、IT分野での消費電力量が増加し続けていることが問題視されるが、ことデータセンターに関しては、消費電力を削減するのは簡単なことではないことがよく分かる。

直流給電への対応

高効率化に関するもうひとつの取り組みとして、直流給電も存在している。同センターでも、テレコム系で広く使われているDC48V給電ではあるが、直流給電の設備が備わっている。ただし、こちらはユーザーニーズはごく少ないのが現状だそうだ。データセンターに設置されるIT機器や周辺設備などがすべて直流給電に対応するのであれば全面的に直流給電に統一することも可能になるのかもしれないが、現時点では交流給電の設備を用意しないわけにはいかないため、直流給電に対応することは単純に二重投資となるリスクが高いわけだ。そのためもあってか、一般のデータセンターでの直流給電への取り組みは目立った進捗を見せていない状況だが、その現状は同センターの状況を見てもよく理解できるものとなっている。とはいえ、NTTPCでは直流給電の可能性を諦めたわけではなく、将来的に標準規格化や関連法整備が行われることが必須条件としつつも、さらなる高効率化を達成するためには必要となると予測している。すでにDC48V直流給電の運用実績を持っているため、実用段階に入った際には、いち早く高圧直流給電にも対応できるものと予想される。

屋上緑化

屋上緑化も省エネルギーへの取り組みのひとつである。既存ビルの屋上は耐荷重などの問題から導入が難しいビルも多いが、この施設では、屋上緑化により遮熱と葉からの蒸散作用による気化熱で夏場の温度上昇が低減される(写真10)。緑化された区域は、1日の温度変化も少なく、冷却のための電力を引き下げることができる。最近の屋上緑化では、土を持ち込む必要のない緑化への取り組みも行われているが、データセンターでの採用は、まだきわめて珍しいといえるだろう。

屋上緑化
写真10 屋上緑化
夏場には、建物内の温度上昇を抑制する。

先進性を具現化したデータセンターの意味

データセンターを名乗る以上、停電時に備えた予備電源の確保は当然といえるし、セキュリティ維持のための厳密な入退室管理も今では必須要件と考えるべきだ。とはいえ、こうした要件がどのレベルで実現されているのかという点は、データセンターごとに異なっており、差別化要素であり、あるいはデータセンターの個性を反映する要素でもある。当然ながら、レベルが高ければ高いほどよいという単純な判断ではなく、ユーザー側の要求レベルと合致しているかどうかが問題となるわけだ。

NTTPCの門前仲町データセンターの場合は、基本的にはあらゆる要素すべてに渡ってトップレベルを目指したファシリティだと位置付けてよいだろう。それに加えて、太陽光発電、屋上緑化、LED照明、直流給電の対応など、経済性を考えるなら、現時点では通常のデータセンターでは採用できないようなものにも敢えて取り組んでいる。したがって、ユーザー企業も単にデータセンターに求められる要件を満たしてさえいれば良いという考えではなく、できる限りの高品質なサービスを利用したいと考えるユーザーが主体となるだろう。そう考えれば、現時点ではコスト面では不利になりかねない高効率化に関するさまざまな設備も、「先進的な取り組み」として評価されることになる。

また、今後の環境問題への取り組みがより厳しさを増せば、法規制によりエネルギーの使用効率をさらに高める必要性が生まれる。あるいは省エネルギー化の整備された施設を利用する企業への優遇措置や、官庁や国の団体が、一定以上の省エネルギー化を条件とした入札を行うなど、こうしたことが現実のものとなったとすると、まず間違いなく選択対象となるデータセンターとなるはずだ。

たとえ現時点で経済性の観点からは不利であっても、将来を見据えて今から省エネルギー化でさまざまな手段に取り組んでいることが、おそらく同社にとってのノウハウとして次世代のデータセンターに生かされていき、それが他のデータセンターとの差別化要因として、大きく影響すると考えられているのではないだろうか。

先端技術は、登場当初には高価なソリューションとなってしまうが、普及してくればコストが下がってくる。誰も利用しない技術はコストも下がらず消えてしまう結果に終わるので、まずは門前仲町データセンターのような先進的な設備で新しい技術を積極的に取り入れていることは、歓迎すべきことだといえるだろう。

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