さくらインターネット 堂島データセンター

本格稼働する省エネデータセンター

さくらインターネットは、東京都に池袋、東新宿、西新宿、代官山に4つのデータセンター、大阪市の本町、堂島に2つのデータセンターを運営しており、ハウジングサービスをはじめ、レンタルサーバーサービス、そして最近ではマネージドサービスにも事業の範囲を拡大している大手データセンター事業者のひとつである。今回は、2009年2月に省エネルギーとデータセンタースペースの有効活用を図った、堂島データセンターを取材した。

文:廣澤 純、写真:ナイスマックス

好調なレンタルサーバー事業の推移

さくらインターネットの堂島データセンターは、大阪の拠点のひとつとして、2004年4月からコロケーションとレンタルサーバー事業のデータセンターとして運営されている。2009年2月にはレンタルサーバー事業専用のフロアを増床し、すでに2回目の増設を行った11月時点ではこのフロア全体のラック数は158本となり、堂島データセンター全体では717本、最終的には800本程度のラックを設置することになる。

同社の専用レンタルサーバーサービスの売上高は、前年同四半期比16.3%増、共用レンタルサーバーサービスでは25.8%増と好調な受注状況であり、2009年3月末には、専用レンタルサーバーサービスのサーバー稼動数が10,000台を突破している。こうした背景から、堂島データセンターでは、今後のレンタルサーバーサービスの増加需要を勘案し、漸次増床が図られている。

同社のレンタルサーバー事業は、月額125円の共用サーバーから、複数台構成の専用サーバーまで幅広いレンジでサービスを提供しているが、いずれの分野においても、価格面では他社に対して大きな強みを持っている。この強みを生かした事業を支えるためには、データセンタースペースの効率的な活用とエネルギーコストの削減が要求されるのは必然だろう。そのため、2月に新しいフロアを増設する際に、エコ、収容効率の改善、コストダウンを図るために抜本的な見直しを図った。

増設した堂島データセンターのレンタルサーバー専用フロアでは、自社開発の省スペース・省電力サーバーのほか、高開口率で通風性に優れたデータセンター専用ラック、ラックの前後通路を両方とも覆い、冷気を囲い込むアイルキャッピングと高効率空調機の採用など、さまざまな手段を利用することで、サーバーの収容効率を高め、省エネルギーとデータセンタースペースの有効活用を図っている。

一般にデータセンターの運営には、2つのタイプがあるといわれる。ひとつは土地、建物、設備があり、そこに顧客のサーバーを預かるコロケーションやマネージドサービスを主体とするケース。そして他のひとつは、コンテンツ、サービス側を主体に考え、そこに必要なサーバーやファシリティを整備するケースだ。堂島データセンターは、後者のケースに相当するが、自社の資産としてサーバーやラックを所有するため、消費電力を下げる対策でも、よりアグレッシブにさまざまな対策をとることができる。

アイルキャッピングとFMACS

堂島データセンターで増床した新フロアは、NTTファシリティーズと共同で設計を行い、アイルキャッピングや高効率空調機などの導入を図っている。アイルキャッピングとは、ラック列間の通路を壁や屋根で区画し、サーバーの吸気と排気を物理的に分離して、コールドアイルの気流制御を行う技術だ。アイルキャッピングは、IT装置の排気の回り込みが生じないため、最低限の風量で適正な温度環境を実現する。また、キャッピングで冷却部分の体積は小さくなっているので、当然エネルギーコストは下がり、空調から供給される冷気は、そのほとんどがサーバーの冷却に使われるようになる。通常のアイルキャッピングでは、コールドアイルとホットアイルの2種類のアイルがあり、コールドアイル側の冷気を閉じ込める形になるが、さくらインターネットでは、シャーシの奥行きが通常の2分の1のハーフサーバーや横幅、奥行きとも2分の1のクウォータサーバーを使用し(詳細は後述)、サーバーをラックの前後からマウントしているため、ラックは前後両面から吸気するようになっている。つまり、すべての通路がコールドアイルとなっているわけだ(図1、写真1、写真2)。

図1 前後列アイルキャッピングによる気流
図1 前後列アイルキャッピングによる気流
アイルキャッピング(天井部)
写真1 アイルキャッピング(天井部)
ラック上部をバッフル(隔壁)で塞いでいる。
アイルキャッピング(通路側)
写真2 アイルキャッピング(通路側)
通路の入り口側も、冷気が逃げないように透明なビニールでカバーしている。

同センターの従来のラックの排気方式では、床下から吸い込んで、上から排気するという形を使っていたが、これだと吸気口が小さすぎて、冷却にムラができる。また、下から入れて上から排気するという方式は、暖気の上昇気流が使えるので効率はよいが、どうしても上部には冷気が回らないという欠点がある。その点、今回改善された方法では、サーバーの吸気側であるラックの前後列がアイルキャッピングされたコールドアイルとなり、すべてのサーバーに均等に冷風が入っていくようになる。また、通常のラックでは、ファンを付けないと排熱するのは難しいが、サーバーの前面から吸気し、ラックの中央部の上昇気流で排気するため、より効率的に排気が行える。

NTTファシリティーズによれば、「現在のデータセンターの標準的な空調方式である、二重床吹出横吸込方式と比較して、アイルキャッピング設置により空調風量を必要最小限にできるため、空調機の消費電力を約20%削減することができる」としている。

サーバールームの冷却をつかさどる空調機には、高効率空調機として世界最高水準の省エネルギー性能を達成したとしている、FMACS-Vを採用している(写真3)。最高水準と称するだけあって、顕熱能力で56kWの能力を持つ最大のLL型でも、消費電力は20kWと小さい(詳細については、2009年秋号を参照)。高効率であるだけでなく、多点温度制御や冷凍サイクル予測制御、震度6強耐震性、EMC耐性、自動復電機能など、データセンター向けの様々な技術が実装されている。それだけに一般電算機用空調機と比べた初期投資額は大きいが、環境性と経済性が中期的に有利なため、持続的な事業性に貢献しているといえるだろう。

写真3 FMACS-V
写真3 FMACS-V
NTTファシリティーズの高効率空調機

自社開発サーバー

さくらインターネットの省エネルギー対策のもうひとつの特徴は、サーバー自体を自社で開発しているという点だ。前後吸気ができるように特別に開発し、ラックの前後からマウントすることで、高集積を実現している。マザーボードに関しては台湾製の汎用製品を購入し、サーバー製造委託業者で組み立てを行っている。

1UハーフサーバーL型モデル
写真4 1UハーフサーバーL型モデル

1UハーフサーバーL型モデル(写真4、表1)は、Xeon E3110、あるいはCore2Duoを搭載したモデルで、通常のサーバーと比較するとファンの数が3つと圧倒的に少ない。消費電力もXeon搭載で約100W、Core2Duoでは約65Wとこれも通常と比較すればかなり低消費電力だ。ほかにも、シャーシは同様のものだが、マザーボードは用途に応じて2、3種類用意されている。

表1 1UハーフL型サーバーの仕様
モデル名 SUPERMICRO X7SBL-LN2(Micro-ATX)
CPU Intel Xeon E3110(3GHz L2 6MB)
Intel Core2Duo E7500(2.93GHz L2 3MB)
Chipset Intel 3200 + ICH9R Chipset
MEMORY DDR2 2GB 最大4GB
HDD 500GB SATA
増設RAIDカード 3ware 9650SE-2LP(RAIDモデルのみ)
平均消費電力 Xeonモデル(RAIDカード付き):約100W
Core2Duoモデル:約65W
1Uクォータ型モデル
写真5 1Uクォータ型モデル

もうひとつの1Uクォータ型モデル(写真5、表2)は、デュアルコア、Hyper-Threding対応のAtom 330を搭載し、消費電力はわずか35Wにすぎない。1ラックに130台収容しても、1ラックの電力は4.5kVA程度ですんでしまう。最近のハイスペックなデータセンターでは、6kVA、8kVAが要求されるようになっているが、1ノード当たりの消費電力さえ下げられれば、平均的な4.5kVAの電力でも130台が稼働するというわけだ(写真6)。次の世代のモデルでは、さらにTDPの低いCPUを使い、200台〜400台のサーバーを搭載するというプロジェクトも進めているという。

表2 1Uクォータ型サーバーの仕様
モデル名 Intel D945GCLF2(Mini-ITX)
CPU dual-core Intel Atom330
Chipset Intel 945GC Express Chipset with ICH7
MEMORY DDR2 1GB
HDD 160GB SATA
平均消費電力 約35W
サーバー搭載済みのラック前面
写真6 サーバー搭載済みのラック前面
クォータ型のサーバーが、ラック全体にぎっしりと隙間なくマウントされている。
ラック内のACタップ
写真7 ラック内のACタップ
電源ケーブル長が30cmしかないため、ACタップの数、場所ともに厳密に決められている。

サーバーの消費電力ではCPUやHDDが大きな比率を占めるが、同社開発のサーバーでは、ファンの数にも気を遣うという。ファン1個の消費電力は2W〜3W程度だが、1台のサーバーに2つのファンで4Wでも、100台では400Wとなり、4kVAのラックで10%を消費するのは大きな問題となる。原価3,000円の専用サーバーが2,700円になるかどうかという瀬戸際なのだそうだ。

ラックのサーバー密度が高くなれば、当然ケーブルの本数も増える。大量のネットワークケーブルは気流を乱すため、同社では専門のスタッフが最適な長さのLANケーブルを社内で製作しているそうだ。また、電源ケーブルについても、長い電源ケーブルは発熱により冷却の妨げにもなり、特に束ねていると発熱量も大きいという。同社では特注で30cmの電源ケーブルを製作し、1ラック当たり1Aぐらいは省エネできたそうだ。そのため、ラック内のACタップの場所も細かく決められている(写真7)。

高集積に耐えるラック

1ラックに130台ものサーバーを搭載するため、排熱性の高いラックを採用する必要がある。同センターで採用した河村電器産業のNDシリーズは、さまざまな運用上の効率化を図る工夫が施されているが、特に扉面の開口率が75.8%のパンチング材(従来品は開口率63%)を使用し、従来のものに比べて13ポイント向上しており(写真8)、吸気性能が改善されている。天井部には、換気扇に使われている口径の大きなファンが2つ付いており、排気性能も向上している(写真9)。このファンは数年前から使われているものだそうだが、今回はシミュレーションを行った結果、高集積のサーバーに対応するために2つ装備するように改良されたそうだ。

ラック扉の開口部
写真8 ラック扉の開口部
扉の開口率を約76%にしたことで、排熱機能が向上している。メーカー公表値では、「発熱量6000W機器の搭載時に内部温度上昇10℃以下を実測!」とある。
ラック天井部のファン
写真9 ラック天井部のファン
口径の大きなファンが2つ装備されている。ラック内部の暖気を排気する。

フロアの設計段階では、河村電器産業の熱解析シミュレーションを使い、ラック内の温度分布が検証されている。今回のサーバーモデルだけでなく、さくらインターネットで開発した他のタイプのサーバーとNECのハーフサーバーに関しても、熱量のシミュレーションを実施しており、サーバーの設置場所と台数に関しても、最も空調効率の高い方法をシミュレーションで検証しているという。実際のシミュレーション結果が図2と図3だが、明らかにサーモグラフの状態が違っている。

従来ラック使用時の熱解析結果
図2 従来ラック使用時の熱解析結果
1UハーフL型サーバーの前後マウント。ラックの床下から天井部吹き上げの場合。
図1 前後列アイルキャッピングによる気流
図3 新型ラック使用時の熱解析結果
1UハーフL型サーバーの前後マウント。ラックの前後通路面から横吸い込みの場合。

ちなみに、同社と河村電器産業のつきあいは、創業以来のものだそうだ。創業したときに、最初に1本購入したのが河村電器産業のラックだそうで、河村電器産業は当初オフィス用のラックを製造しており、ちょうどデータセンター向けのラックに進出するタイミングだったそうだ。その後、河村電気産業の技術者とともにさくらの技術者が協力し、1本目のデータセンター向けラックを製造したという経緯がある。同社の現場でのノウハウをラックの設計に取り入れ、使い易いラックを標準品として製造してもらい、同社で購入するという方法をとっている。

今後の省エネ施策

先に述べたTDPの低いCPUを使用したサーバーの開発だけでなく、サーバーの電源にDC12Vのリチウムイオンバッテリを使い、DC12Vでマザーボードに供給する、直流給電のサーバーの開発も考えているという。これにより電源の効率は5%〜10%改善し、UPSも必要なくなる。非常にメリットが大きいと同社では考えているが、現状では、高圧直流電圧の標準が定かではなく、あと1年は先のことになるだろうとのことだ。

直流給電に関しては先頃、NTTファシリティーズが行った高電圧直流給電システムの実証実験の結果が発表されている。IT機器の合計で最大18%程度の削減効果を検証したと報道されているが、実用化に向けて今後の進展を期待したいところだ。

12月5日開催!クラウド&データセンターコンファレンス 2017-18

資料請求・見積依頼

下記リストの12事業者の資料・見積をまとめてとれます!
「資料請求」または「見積依頼」をご利用いただいた方“全員”に、データセンター完全ガイド最新号をプレゼント!12/20まで

データセンター&ITインフラサービスの資料が、まとめてとれます!

資料
すべて
見積
すべて
データセンター&ITインフラサービス
鈴与シンワート
オージス総研
(大阪ガスグループ)
北電情報システムサービス
富士通エフ・アイ・ピー
AGS さいたまiDC
エネルギア・コミュニケーションズ
キューデンインフォコム
エクイニクス・ジャパン
SCSK
シーイーシー
データドック
ベッコアメ・インターネット

※会員としてログインされている場合でも、プロフィールの入力が必要です。予めご了承ください。

雑誌最新号

クラウド&データセンター完全ガイド2017年秋号

【特集】 特集データこそ最大の経営資産の今
[攻め]で臨むITインフラセキュリティ

表紙『クラウド&データセンター完全ガイド2017年秋号』

発売:2017年9月29日
定価:本体2,000円+税
判型:A4変型判(144ページ)
ISBN:978-4-295-00245-1

調査報告書

表紙『データセンター調査報告書2017』

データセンター調査報告書2017

事業者、利用企業共に
クラウドシフトがより鮮明に

発売:2017年10月2日
判型:A4判(372ページ)
プレスリリース
試し読み(サンプル版)

データセンター検索

文字列検索
1/4ラック月額
回線種類

回線月額

インプレスグループ創設25周年