クラウド間接続によるプライベートクラウドの構築とサービスレベル管理を実現 【VMware vCloud Director】

ヴイエムウェア株式会社
http://www.vmware.com/jp/products/vcloud-director/dex.html

text:渡邉利和
データセンター完全ガイド 2011年冬号(2010年12月20日発行)掲載

VMwareの資料によると、プライベートクラウドを構築するシナリオでは、まず論理ユニットへのITリソースのプールを作成し(サーバー、ストレージ、およびネットワークを仮想化し、仮想データセンターに抽象化する)、次に標準化されたサービスカタログの作成を行う(ユーザーが利用できるサービスのカタログを作成し、仮想インフラで実行されるアプリケーションにサービスレベルを定義する)としている。VMware vCloud Directorとは、vCenterの管理するすべてのリソースを抽象化し、まさにこのプライベートクラウドの構築を実現するソフトウェアである。

サービスカタログの実現

vCloud Directorでは、複数のデータセンターのリソースを統合したうえで、サービスレベルの異なる、複数のリソースのセットを提供することができる。主な用途としては、IaaS事業などがプライベートクラウドを構築するような状況を想定しているようだ。仮想サーバーのレベルでは、割り当てる仮想プロセッサの数やメモリ容量、HDD容量などを変更することでサーバーの「グレード」を調整できるわけだが、vCloud Directorではあらかじめ設定しておいた「サービスカタログ」から選択するだけで必要なグレードの仮想環境を即座に利用可能にできる(図1)。この際カタログに割り当てられるリソースは、あらかじめ組織に割り当てたグレードの仮想データセンターのリソースから割り当てられる。従来のvCenter Serverが、仮想マシンのリソースを、管理下の物理サーバー群のリソースプールから割り当てていたのとは、抽象レベルが異なっている。つまり、サービスカタログという発想自体が、より高度な抽象化を行い、システムの具体的な詳細を隠蔽する方向に向かっている点が重要なポイントだろう。単に管理対象となるリソースプールが1レベル上位に移っただけではなく、想定する使用者のレベルもITシステムの運用管理担当者からサービス提供者へとより抽象度を高める方向に移っているといえる。

図1 vCloud Director
カタログベースのサービスとして、必要に応じて利用可能なITリソースをユーザーに提供する、セキュアなプライベートクラウド環境を構築する。(出典:VMware)
図1 vCloud Director カタログベースのサービスとして、必要に応じて利用可能なITリソースをユーザーに提供する、セキュアなプライベートクラウド環境を構築する。(出典:VMware)

vCloud Directorでは、複数のデータセンターを単純に接続するだけではなく、マルチテナント環境をサポートし、統合された仮想データセンターを複数に分割して相互の独立を保つこともできる。セキュリティに関してもvShieldセキュリティテクノロジーが活用されており、各組織に独立したLDAP認証を使ってアクセス制御を行うため、設定された境界を越えたアクセスは完全に阻止される。

サービスカタログを利用してリソースを確保するといった操作は、ユーザー向けのウェブインターフェイスを介して行うことができる(画面1)。当然、マルチテナント環境ではサービスカタログ自体が分離されるため、対象となる顧客ごとに異なるカタログを提示することができる。たとえば、社内ITシステムの提供に活用する場合には、業務部門向けと開発部門向けにそれぞれ異なるポリシーに基づいたサービスをカタログ化して用意しておき、さらに両者を完全に分離しておくといった運用が可能になる。

画面1 ウェブインターフェイスの操作画面(出典:VMware)
画面1 ウェブインターフェイスの操作画面(出典:VMware)

米国では一般的となりつつある「サービスカタログ」機能だが、国産ベンダーではあまり実装例は多くはないようだ。これは、ユーザー側がITをサービスとして利用するという発想になっておらず、ニーズもあまりないという理由らしい。とはいえ、クラウドサービスに対する関心が急速に高まりつつある現在、ITリソースの詳細にまで立ち入らず、より抽象度の高いサービスとして利用することが一般化する可能性は高い。一方でクラウドサービス/IaaS事業者向けのソフトウェアの提供はまだ標準が確立する段階には至っておらず、各事業者がそれぞれ独自にインターフェイスを工夫し、機能を実装してサービスを実現している状況だ。仮想化プラットフォームとして大きなシェアを持つVMwareがこうしたサービスレイヤでの機能を実装したツールをリリースすることで、データセンター事業者がサービスを提供しやすくなる環境が整ってくることが期待される。

データセンター間の接続

vCloud Directorの大きな特徴のひとつが、データセンター間の接続機能を実装した点だ。以前からVMwareでは、クラウド間接続のための標準APIとしてvCloud APIを提唱しており、標準化に向けた取り組みを行っている(図2)。vCloud Directorは内部的にvCloud APIを実装しており、これを使って物理的なデータセンターをまたがった「仮想データセンター」を実現している。

図2 vCloud API
VMwareでは、クラウド間接続のための標準APIとしてvCloud APIを提唱しており、標準化に向けた取り組みを行っている。(出典:VMware)
図2 vCloud API VMwareでは、クラウド間接続のための標準APIとしてvCloud APIを提唱しており、標準化に向けた取り組みを行っている。(出典:VMware)

vCloud APIは、標準規格となることを目指してはいるものの、現時点ではまだ標準といえるほど普及しているわけではない。むしろ、実用化に向けたブラッシュアップの最中といっても過言ではない状況だろう。実際、VMwareの仮想化プラットフォームを活用していたとしても、「vCloud APIを利用すれば即座に相互接続が可能」といえる状況ではない。現時点では、接続に参加する各データセンターにはそれぞれvCloud Directorが稼働していなくてはいけないのだが、従来は「標準規格候補」にすぎないともいえたvCloud APIが実装された環境が稼働することにより、接続を実証できるようになった意義は大きい。接続検証が可能になることにより、他社によるvCloud APIのサポートが推進されることにも期待が持てる。

vCloud APIでは、「vAppのアップロード/ダウンロード、カタログ管理、その他のクラウドリソースを利用するための作業をスクリプトで処理できるようになる」とされている。逆に言えば、現状のvCloud Directorの主要な機能は基本的にはvCloud APIの機能とほぼ重なっているということにもなる。VMwareではvCloud APIをオープンな標準として育てていくことを表明しており、独自APIによる囲い込みなどは避けて標準ベースでの機能実装に取り組むことを表明している。vCloud Directorの製品化は、こうした方針の具体的な表れだと評価することもできそうだ。

vCloud Directorのもたらす環境

vCloud Directorでは、データセンターをまたがった仮想マシンの移動などもより透過的に行うことができるようになる。むしろ、ウェブインターフェイスを介して仮想データセンターのリソースをサービスカタログから選んで利用しているユーザーにとっては、自分が利用しているサービスの実体がどのデータセンターにある物理サーバーで稼働しているのかどうかを気にする必要すらなくなっている、というほうが実態に即しているだろう。

従来の仮想化環境では、物理サーバーのリソースを仮想化し、vMotionによる仮想サーバーの物理サーバー間移動を可能としたことによって物理サーバーのリソース利用率を高め、サーバー間の利用状況を平準化することも可能になった。vCloud Directorでは、こうした機能をデータセンター単位に拡張し、複数のデータセンターに分散して配置された、多数のサーバー群の利用効率を高めると同時に、利用状況の平準化も実現できることになる。これまでであれば、あるデータセンターの負荷が高まったからといって、空いているデータセンターとの間で負荷分散を行って平準化するといった作業は簡単にはできなかったのだが、vCloud Directorではこうした環境が当然のものとして実現できてしまう。クラウドが注目されているとはいえ、特に日本国内の現状としてはおおむね「クラウド≒データセンター」であり、あるデータセンターのL2ネットワーク上に接続されたサーバー群がクラウドとして利用できるリソースのすべてという状況であった。vCloud Directorはこうした状況から一歩踏み出し、データセンターという物理的なファシリティの枠を越えたサービス提供を実現するために役立つものと期待される。

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