クラウドに向けた仮想化インフラの進化を着実に進める【VMware】Part 1-1

進化するデータセンターの仮想化

文:渡邉利和

vSphere 5

V2011年7月に発表された「VMware vSphere 5」では、「インフラサービス」と「アプリケーションサービス」の両面に渡ってさまざまな新機能が実装された(図1)。インフラサービスは、ハイパーバイザーの最も中核的な機能となる“物理リソースの仮想化”に関してさらなる拡張が行われた点が注目される。ハイパーバイザーに関しては「すでにコモディティ化している」という声も聞かれていたが、vSphere 5での進化を見れば、「ハイパーバイザー単体で稼ぐのは難しい」という点に異論はなくても、「ハイパーバイザーにはもう進化の余地は残されていない」とか「どれを選んでも大差ない」といった状況には、いまだ至っていないことがわかる。

図1 VMware vSphere 5の最新機能(出典:ヴイエムウェア)
図1 VMware vSphere 5の最新機能(出典:ヴイエムウェア)

ハイパーバイザー

vSphere 5では、1つの仮想マシン(以下VM)に割り当て可能なCPUとメモリが、vSphere 4の4倍に拡大され、仮想プロセッサ数が最大32CPU、メモリは1TBが割り当て可能になっている(図2)。ここまで大規模なVMが必要なのかと思えるほどだが、同社の狙いは「あらゆるワークロードに対応する仮想化プラットフォームの提供」にある。現状で物理プロセッサを16以上使って実行するような極めて高負荷な処理も存在する以上、仮想化プラットフォームはそうしたワークロードさえも仮想化できるように進化せざるを得ない。仮想化の導入によってインフラが複雑化するという指摘はよく聞かれるが、その原因の1つが「すべてを仮想化することはできず、物理インフラと仮想インフラを混在させることになる」点だということを考えれば、あらゆるワークロードをすべて仮想化できるインフラの実現こそが、正しい解決策となるはずだ。

図2 vSphereの機能拡張(出典:ヴイエムウェア)
図2 vSphereの機能拡張(出典:ヴイエムウェア)

また、vSphere 5からは、ハイパーバイザーがESXiのみに統一された点も重要な変化となる。ESXiはもともとサーバー組み込み用のハイパーバイザーとして市場投入されたもので、USBメモリキーなどにインストールしたうえでサーバーベンダーが出荷時にESXiの稼働環境構築済みとして販売できるようにしたものだ。フットプリントを削減するために管理コンソール用としてESXには実装していたLinux由来のコンソールOSを削除し、vCenterからのリモート管理を前提としたハイパーバイザーとして、登場時点では“特殊な軽量版”という位置付けにも見えたESXiだが、本家のESXを駆逐して標準ハイパーバイザーの地位を獲得したわけだ。これはもちろん、製品ラインアップを整理することで、VMwareとユーザーの双方で運用管理負担を軽減できるというメリットが期待できるわけだが、それ以上に重要なことは、ベアメタルインストールが容易になったことだろう。同社では新たに「Auto Deploy」機能として、新規にインフラに追加されたサーバーハードウェアを、ネットワークブートさせることでゼロからESXi環境をインストールし、既存の仮想化インフラに組み込むところまでの作業を、すべて自動化することに成功している。こうした作業を実現するには、短時間でインストールできるESXiのほうが有利になる。しかも、Auto DeployではインストールするESXi環境にあらかじめ固有の設定情報を埋め込んでカスタマイズしたものを配布できるため、新規ハードウェアをネットワークに追加して、仮想化インフラに組み込む作業がほぼ完全に自動化できてしまう(図3)。これはもちろん、大規模なクラウド環境でのダイナミックなリソースの追加作業を念頭に置いた拡張だろう。ハードウェアをラックに搭載してネットワークや電源の結線を済ませておけば、あとは必要になった時点ですぐに利用可能な状態にまで持っていけるため、大規模なクラウド環境における運用管理の効率向上に大きく寄与するはずだ。

図3 Auto Deployの概要
図3 Auto Deployの概要
(出典:VMware vSphere Evaluation Guide Volume Four)

ストレージの仮想化

ストレージの仮想化が大きく進化した点も、vSphere 5の重要なポイントだ。従来“ストレージの仮想化”というと、主にストレージハードウェア側での仮想化技術のことを指しており、ハイパーバイザー側からは従来通りに「明示的に割り当てられた領域にアクセスする」というモデルで利用するだけだった。しかし、vSphere 5ではVMに対するストレージ領域の割り当ても仮想化され、運用管理者は論理的な結び付きを管理するだけで済む、新しいインターフェイスが提供された。このベースになっているのは以前から実装済みの“Storage vMotion”の機能だ。Storage vMotionによって、必要に応じてストレージ領域のコピーを別の領域に作り、割り当て変更を行うことはできるようになっていた。vSphere 5ではこの機能を活用するための上位機能を拡張し、ストレージのアクセス性能などのポリシーに基づいて、適切なストレージを選択する機能が新たに加わった。これをStorage vMotionと組み合わせる形で実現したのが“Storage DRS”である(図4)。コンピューティングリソースに関しては、DRS(Distributed Resource Scheduler)によって自動的なロードバランシング機能としてすでに実装済みだが、これと同様の機能をストレージに関しても実現したのがStorage DRSとなる。いわば、vMotion/Storage vMotionと同様の拡張がDRSに関しても行われたものだといえるだろう。Storage DRSを実現するに当たって、管理者側ではストレージを従来のような「物理デバイス上に作成された特定の領域」という指定ではなく、ポリシーに基づいた指定を行う。具体的には、I/O性能が高いストレージとか、容量単価の安いストレージ、といった属性が考えられるだろう。個々のストレージ上に確保された領域がどのような属性を持つかをvSphere側で管理し、各VMからのストレージ割り当て要求に対して適切な属性を持つストレージ領域を自動的に割り当てていくというのが、Storage DRSの基本的な考え方となる。このため、vSphere 5ではストレージ領域を属性に基づく「ストレージプール」として扱うことができるようになった(図5)。また、ストレージ側がどのような機能/属性を持つかをストレージ側からvSphere 5に通知できるような新たなインターフェイスも用意されている。ストレージベンダーが提供する属性情報があれば、管理者はストレージの詳細についてまったく気にすることなく、ストレージが接続されれば、あとは自動的に使い始められる環境が実現できるようになるだろう。これも、クラウド環境でのストレージ割り当て作業を省力化し、運用の効率化を推進するために導入された機能である。

図4 Storage DRS
図4 Storage DRS (出典:ヴイエムウェア)
図5 Profile Driven Storage
図5 Profile Driven Storage(出典:ヴイエムウェア)

ネットワークの仮想化

最後に、ネットワークの仮想化に関しても進展について紹介する。仮想化インフラのネットワークリソースに関しては、vMotionの実現のために全体をL2ネットワークとして運用する必要がある。vMotionでVMが別の物理サーバーに移動した際にも以前と同じIPアドレスを使い続けるためには、全体がL2のフラットなネットワークになっていないと都合が悪いという理由によるものだ。しかしこれは、ネットワークの拡大を制約する要因にもなり得る。たとえば、企業内部のプライベートクラウド環境と外部のクラウド事業者が運営するパブリッククラウドサービスを接続したハイブリッドクラウド環境を実現する場合、両者が単一のL2ネットワークを構成するようになんらかの工夫を行わない限り、プライベートとパブリック間でのVMの移動はできないことになるためだ。VMwareの場合は以前からvSwitchを提供しており、単一のL2ネットワーク環境が実現されている場合には、高度なネットワーク仮想化機能が利用できるようになっていたが、基本的には単一データセンター内部で利用できる環境である。これをデータセンター間に拡張し、ハイブリッドクラウド環境を適切に運用できるようにするためには、L3で分割されたネットワーク間を単一のL2ネットワークに見せかけるための工夫が必要になる。このための同社の取り組みが、VXLANだ(図6)。これはVLANを拡張して異なるネットワークを単一のVLANとして接続できるようにするための規格であり、同社が主導する形でIETF(Internet Engineering Task Force)に標準化提案が行われている。提案メンバには同社と密接な協業関係にあるCISCOも加わっているため、実現の可能性は相当高いと期待できる。従来は、仮想化環境を前提としたL2ネットワークの機能拡張の取り組みとしては、ネットワークベンダーが個々に“イーサネットファブリック”という形で製品化に取り組んでいたが、VXLANが標準化されれば、基本的な部分は標準仕様としてマルチベンダー環境で利用できるようになるだろう。

図6 VXLANe
図6 VXLAN(出典:VMware)

IAサーバーのプロセッサやメモリの仮想化やそれに関わる技術はかなり成熟してきており、パフォーマンス面でも仮想化によるオーバーヘッドをユーザーに意識させることは少なくなってきている。その意味では、プロセッサの仮想化に関してはほぼ完成の域に近付いているといっても過言ではない状況だろう。しかし、それでIAサーバーの仮想化インフラ自体が完成したわけではない。仮想サーバーが利用する主要リソースとして、ストレージとネットワークに関してもプロセッサと同じような高いレベルの完成度を実現していく必要がある。このテーマに関しても、VMwareがいち早く今後の方向性を示したといって良さそうだ。

運用管理環境の成熟

運用管理に関しても、VMwareの取り組みはクラウド環境を前提としたものに大きく進化を遂げたといってよいだろう。仮想化をいち早く導入した企業であっても、システムの実態は「従来の物理サーバー環境をそのまま仮想環境に置き換えただけ」という例が珍しくなかった。これをアプリケーションの視点で見ると、従来の硬直的なサイロ化されたシステムがそのまま“サイロ化された仮想インフラ”に置き換わっている例が少なくないという。一方、クラウドに象徴されるとおり、こうしたサイロに分断されたインフラを統合し、巨大なリソースプールとしてまとめて運用管理を行ったうえで個々のワークロード毎に適切な割り当てを行うという、いわばレイヤ毎に横串で切っていくアプローチに移行しないと、効果的なコスト削減は難しいのも確かだ。vSphere 5世代の運用管理ツールは、こうしたコンセプトを取り入れて大きく3レイヤに整理されている。具体的には、インフラの運用管理を行う「vCenter Operations Management Suite」、アプリケーションファブリックの管理に対応する「vFabric Application Management Suite」、最上位のサービスレベル管理に注目した「IT Business Management Suite」の3製品に整理統合が行われている。

vCenter Operationsv

vCenter Operationsは2011年3月にリリースされた製品だが、半年ほどで大規模なバージョンアップが行われた形だ。これに伴い、バージョン表記もリリース時のV1からvSphereに同期する形で一気にV5とされた。ここでの大きな進化は、従来の同社の方針が転換され、VM内部の個々のアプリケーションの状況が“ブラックボックス”ではなくなった点だろう。従来のVMwareは仮想サーバーの実行までの部分に責任を負う、という境界線引きを行っており、仮想サーバーの内部で実行されるアプリケーションの詳細情報に関しては「仮想化インフラからは見えないもの」としてきた。もちろん、仮想サーバー上で稼働する個々のアプリケーションの詳細情報を知りたければ、仮想サーバーを管理するゲストOS上で稼働する各種の運用管理ツールがすでに存在しているので、それを使えば問題ないわけだ。しかしながら、クラウドのような環境を前提とした場合、物理インフラの運用監視と最上位のサービスの品質を関連付けて考える必要も生じてくる。具体的には、ある物理サーバーに障害が発生した場合に、その障害はどのサービスのパフォーマンスに影響を与えるかがわからないと、大規模なクラウド環境のQoSやSLAは実現し得ないということだ。このため、VMwareではアプリケーションやインフラのリアルタイムパフォーマンス分析技術を擁していたIntegrien(インテグリアン)の買収などにより、サービス視点での影響分析エンジンをvCenter Operationsに組み込んできた(画面1)。また、新規ツールとしてvCenter Infrastructure Navigatorが提供された。これは、VM上で稼働する各種のプロセスを検出/解析し、相互関係をチャート化して可視化できるツールだ(画面2)。これにより、たとえばある仮想サーバー上で稼働しているアプリケーションサーバーが別の仮想サーバーで稼働中のデータベースのパフォーマンス低下の影響を受ける、といった依存関係がわかるようになった。この場合、データベースが稼働している仮想サーバーをホストしている物理サーバーに障害が発生した場合には、アプリケーションのサービスレベルが低下するといった分析が可能になったわけだ。こうした取り組みと関連して、サービス視点でのキャパシティ管理を行うためのツールとして、従来提供されてきた「Capacity IQ」や、構成管理ツールの「vCenter Configuration Manager」もvCenter Operations Suiteに統合され、提供形態がシンプルになった。vCenter Operations Suiteは2012年第1四半期のリリースが予定されており、“Standard”“Advanced”“Enterprise ”“Enterprise Plus”の4エディションが用意される計画になっている。

画面1 vCenter Operations
画面1 vCenter Operations(出典:VMware)
画面2 vCenter Infrastructure Navigator
画面2 vCenter Infrastructure Navigator(出典:VMware)

vFabric Applications Manager

vFabric Applications Managerは、アプリケーションレベルでの運用管理の高効率化を実現することを意図したもので、中核となるのは「vFabric AppDirector」と「vFabric Application Performance Manager」の2つのツールとなる。AppDirectorは、マルチティアアプリケーションのデプロイメントツールだと考えてよい。たとえば、データベース、アプリケーションサーバー、Webサーバーで構成される3階層アプリケーションを1つのパッケージとして準備しておき、簡単な操作で仮想化インフラ上に展開し、実行可能にするものだ。このツールも、大規模なクラウド環境上で具体的なサービスを展開する際に利用されるものだと位置付ければ、その意味が明確になるだろう。現在は、クラウドOSと呼ばれるソフトウェアなどでサービスカタログを実装している例があり、クラウドサービスを利用するユーザーがWebインターフェイスを通じたセルフサービスポータルで“Webサーバー用に構成された仮想サーバー”などを簡単な操作で準備できるが、仮想サーバー上にWebサーバー環境を構築し、さらに必要な個別の設定を行うところは別作業となる例がほとんどだ。AppDirectorはこの部分の作業を自動化するツールだと位置付けるのが最もわかりやすいのではないだろうか。一方、vFabric Application Performance Managerは、アプリケーションレベルのパフォーマンス監視ツールで、アプリケーション動作状況をリアルタイムで監視できる。これは、すでに提供中の旧Hypericのツールがベースになっている。

IT Business Management Suite

最上位の運用管理向けには、IT Business Management Suiteが提供される。これは、クラウド環境上で実行されるアプリケーションを“サービス”という視点で管理するためのツールとなる。クラウド環境が一般に普及した後は、ユーザー企業が利用するのはほぼこのレベルのツールのみで、下位のレイヤのツールはクラウド提供事業者が内部的に利用する、という棲み分けになっていくものと予想される。

運用管理ツールの完成度の高さは以前からのVMwareの強みの部分であり、わかりやすいインターフェイスでインフラの詳細を効率よく管理できる点が高く評価されてきた。vSphere 5世代になっても、こうした基本的な強みについては維持されているが、一方でクラウド環境の運用管理という視点で、全体の体系が整理された点がポイントだ。これまでの同社のクラウド戦略では、企業内データセンター向けに提供される仮想化インフラとクラウドへの取り組みがやや乖離しているような印象もあったが、vSphere 5世代でこの両者が完全に統合され、一貫したコンセプトに基づいて整備されることになった。ユーザーにとっても、自社内のプライベートクラウド環境のインフラ実装からハイブリッドクラウドの実現、サービスレベル運用管理までの完全なロードマップが示されたことになる。今後は、従来のvSphere 4や、あるいはInfrastructure 3環境からvSphere 5へのマイグレーションをいかに円滑に進めていくかが同社にとっての課題になると思われる。

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