クラウド2015ビジョンを段階的に推進するインテル

田口栄治氏

インテル
クラウド・コンピューティング事業本部
データセンター事業本部 シニア・スペシャリスト
田口 栄治 氏

インテルは2010年に、データセンター事業戦略「クラウド2015ビジョン」を発表した。2012年10月18日に開催されたその提言の実現に向けた成果についての説明会を受け、インテル クラウド・コンピューティング事業本部 データセンター事業本部 シニア・スペシャリストの田口栄治氏に、同プロジェクトの今後の展開について話を伺った。
聞き手 本誌編集長 土屋信明  文 柏木恵子  写真 津島隆雄

自動化、シームレス連携、クライアント認識

——インテルが「クラウド2015ビジョン」を提言した背景を教えてください。

田口●インテルは、クラウドの波は社会の動きと密接に繋がっていると思っています。メインフレーム時代からクライアント/サーバーシステムになり、インターネット時代が来て、クラウドの必然性が生まれました。その大きな要因の1つといえるのが、インテリジェントデバイスが急激に増加したことです。"クラウドビジョン2015"を発表した時には、世界中のインターネットに繋がっているデバイスは40億台でしたが、2015年には150億台、もしくはアナリストによっては200億台と予測している人もいます(図1)。

図1 クラウド・コンピューティング需要の増大(出典:インテル)
図1 クラウド・コンピューティング需要の増大(出典:インテル)

インテリジェントなデバイスが増えると、社会変革が同時に起きます。ITのパラダイムシフトは、テクノロジーがあるからシフトするのではなく、社会的な環境がそれを求めた結果です。社会の要求に応じたイノベーションが起きて、それをきっかけに、大きなパラダイムシフトが起きると捉えています。

こうした社会変革の動向を受けて、インテルのコーポレートビジョンも変化しています。かつてインテルのコーポレートビジョンは、世界一のコンピューティング・ビルディングブロックのサプライヤになるとか、どちらかというとインフラ的なビジョンを掲げていました。しかし今では、膨大なデータを利用して豊かな社会を形成するためには、ITで支援していく範囲がより広がっています。そういう社会変革にインテルがどう貢献できるかということに、コーポレートビジョンが変わりました。

ITによって人々や世の中が繋がり豊かな生活をする、そういう世の中の変化に対してインテルが何をすべきか。そういう社会を支えるためのクラウドアーキテクチャが必須なら、そのあるべき姿を明確に予測して示すということです。

——クラウド2015ビジョンでは、どういった施策を実施されるのでしょうか。

田口●クラウドビジョンの具体的な内容として、我々のテクノロジーやソリューションで貢献できる分野として、3つの分野を掲げています(図2)。最初の柱は運用基盤です。クラウド化されるとIT基盤そのものは複雑化しますので、それをいかに効率よく運用するかが重要です。運用の自動化をはじめ、エネルギー効率の最適化や、電力使用に関する社会的貢献などを含めた、運用基盤の最適化といったことが1つめの柱です。

図2 クラウドビジョン2015実現に向けた成果(出典:インテル)
図2 クラウドビジョン2015実現に向けた成果(出典:インテル)

二番目の柱が、フェデレーテッド(federated)なクラウドを作るということです。日本語では「連携」と呼んでいますが、クラウド同士でシームレスな連携をとれるようにすることです。どういうことかというと、たとえば、企業内のシステムがミニマムに最適化されていると、突然のワークロードの増加に対応できません。そういうときに、簡単にパブリッククラウドを利用して作業をオフロードできたり、あるいは、あるパブリッククラウドを使っていたが、もっと効率のよいクラウドサービスに移動したりなど、そういったことが簡単にできるクラウドの世界が必要になります。これを実現するうえでは、当然標準化といった課題もありますが、セキュリティが非常に大きな問題です。オンプレミスと同じセキュリティレベルを担保できるのかというのが、クラウドを使ううえでの一番の課題だとこれまでもいわれています。ここでのインテルの役割は、セキュリティを担保したうえで、ワークロードが自由に往き来できるようにするための要素技術で貢献することです。

三番目の柱は、クライアント・アウェアなクラウド(client aware cloud)ということで、日本語では「クライアント認識」という言葉を使っています。いろいろなデバイスがクラウドに繋がるようになると、デバイスごとにソリューションを作るのはとても大変です。そこで、クラウド側でそのデバイスの情報を理解して、デバイスに合わせた変換をするということです。

たとえば、スクリーンサイズが違うデバイスが繋がっているときに、スクリーンサイズを気にせずにアプリケーションを作っていただいて、クラウド基盤でグラフィックの解像度の違いを吸収する。あるいは、クラウドにバックアップをする場合、パソコンがバッテリで動いていてバックアップを走らせるとすぐにバッテリが切れてしまうようだと困りますね。そこで、バッテリ状況をモニタして、状況に応じてバックアップするといったことです。ほかにも、クライアントマシンのグラフィックス性能が高ければ、描画はクライアントに任せるとか、逆にクライアント側のグラフィック能力が低いなら、クラウド側で画像処理を行って、画面イメージだけを送信するといったことが考えられます。

これは単純にデバイスの能力に留まる話ではなく、さらに拡張すると、コンテキストアウェアといいますか、状況に応じたサービス提供という話になります。代表的なのは位置情報です。位置情報に合わせて適切なサービスを提供するというのも、クライアント認識の1つとして捉えていますし、状況の判断のところは、これからどんどん拡張していく必要のある部分です。繋がった世界の中で豊かな生活を実現するためには、最適なユーザー体験を提供しないといけませんので、それを担保するのがクライアント認識という分野です。

——クライアントにはさまざまな選択肢があり、インテルだけで実現するのは難しいと思いますが。

田口●そのために、業界の標準化団体などの業界活動も重要です。ユーザーの要望に合わせた標準化でなければいけませんし、インテル1社ですべてができるという考えではありません。業界のパートナと一緒にエコシステムをどう作るかを目指しています。エンドユーザーを組織化したオープン・データセンター・アライアンス(ODCA)でITの要望を集約、要求仕様として定義していますが、インテルは技術オブザーバとして参加しています。そういう活動も重要だと認識しています(図3)。

図3 オープン・データセンター・アライアンス(ODCA)(出典:インテル)
図3 オープン・データセンター・アライアンス(ODCA)(出典:インテル)

インフラによるプロファイリング

——運用基盤の最適化では、どのようなことが実施されているのでしょうか。

田口●現在のITインフラは、昔ながらの物理的なサーバーで運用している環境と、仮想化されてスケールする環境が混在しており、サーバーの運用管理は複雑化しています。そのなかで、運用の自動化は避けて通れません。運用管理そのもののソリューションは専門の事業者がいますので、我々は自動化に必要なデータは何かというところを再検討しています。

1つは、きちんとリソース状況の情報を取り出すことを考えています。実は今、ハードウェアのリソース状況をモニタリングするためには、ソフトウェアのエージェントを入れて、ソフトウェアに依存した形でしか情報をとれません。逆に言うと、何かOSやソフトウェアに問題があったらハードウェアの情報をとれなかったり、正確さについてもOSごとにバラバラだったりと、いろいろと課題があります。

もう1つは、エネルギー効率の問題です。インテルのノードマネージャなどを利用して、環境の見える化をサーバー基盤において担保することです。これもいろいろなソリューションがあり、死活については標準化されているが、環境の部分はオプション扱いで実装がバラバラといった状況です。これを標準化しながら、運用ツールに対して標準的なAPIでハード的にアシストするのが1つの方向性です。

重要なのは、最小の資源で最高の効率で運用することです。温度や電力といった環境情報とリソースのモニタリングに、運用やアプリケーションのスケジューラを合わせてインテリジェントに分析し、ワークロードごとに最適化する。それに必要な情報は何かというのを明確化しようとしています。これまでのIT運用基盤は、勘と経験と匠の技で運用基盤を構築しているというのが実状でしょう。それをもっとインテリジェントにしていくというのが、1つの方向性です。実際のアプリケーションのプロファイリングがきちんとできるようなプラットフォームにならないといけない。つまり、プラットフォーム自体がいろいろなことを教えてくれるようなインテリジェンスを持たないといけないということです。仮想マシンを作るときに、インフラの部分のことを考える必要をなくすのが、我々の役目です。

プロファイリングが簡単にできるようになると、今はオーバープロビジョニングで安全をみて、マージンをとってやっていることが、サイジングにしても運用のプランにしても、そのプロファイリングに合わせてきっちりしたサイズで実施できます。

ストレージとネットワークの革新

——ハードウェアに関しては、いくつかリファレンスモデルも提示されていますが、どういった目的があるのでしょう。

田口●私はこの2、3年でストレージ分野は激変すると思っています。1つは非常に成長する市場だということです。既存のデータベースやSANといったストレージも大きく成長していますし、アーカイブやHadoopといった分野は年に60%から80%増という伸びです。もっとも、ストレージの容量当たりの単価を落とさなければならないとか、Hadoopを使うのが難しいといった阻害要因はありますが、それを排除すれば、市場は急速に拡大していくでしょう。この種のストレージは、サーバーアーキテクチャとほぼ同じ考え方で構築できます。その最大のメリットは、ボリュームサーバーを応用できるので、比較的安価なものが作れるということです。最近はいろいろなストレージベンダーからそうした製品が登場しています。既存のストレージのマーケットも伸びつつ、新しいマーケットもできてくるということです。

——容量が大きくなると、ディスクの読み取りエラーが無視できなくなりますね。

田口●そうです。たとえば1PB(ペタバイト)のストレージでRAIDを組むと常にどこかでエラーが発生していてもおかしくありません。最終的に復旧処理が間に合わない可能性も出てきます。その間に冗長性が担保できずに、最悪データを失う可能性もあります。そのため、新しい冗長性の考え方が必要になってきています。Erasure Codingがストレージに応用され始めたというのも、そうした動きの1つです。そういった新しいアルゴリズムを使うと、今までのRAIDによる冗長化ではなく、分散されたストレージの全体をプールとして冗長性を考えるようなソリューションが生まれてきます。そこで今度はそれに最適化されたハードウェアを作る必要性が出てきます。リファレンスモデルの提案は、そうした試みの1つです(図4)。

図4 クラウドストレージ(出典:インテル)
図4 クラウドストレージ(出典:インテル)

また、ディスクはどうせ壊れてくるので、壊れるという前提で考えなければなりません。1つの考え方としては、たとえば1PBのディスクがあるが、壊れて目減りしていくと3年後には600TBになってしまっているかもしれない、それなら最初からこれは600TBのラックということにして、3年間メンテナンスフリーで運用する。そういうやりかたをすると、非常に運用コストが削減できるはずです。これはSSDなどと同じ考え方です。利用領域をどれだけとるか。面白いですよね。塊としての将来の容量を担保できればいい、個別に壊れてもかまわない、いちいちHDDを交換するなんてことはしないというわけです。

選択可能にする情報公開

——セキュリティについてはどのような取り組みがありますか。

田口●セキュリティにはいろいろな分野がありますが、まず要素基盤として、たとえばセキュアなリソースプールを構築可能にするために、プロセッサのレイヤから整備しています。

AES暗号処理をCPUで実行するAES-NI命令セットが代表的なもので、もうかなり業界で採用していただいています。暗号化のオーバーヘッドをほぼなくすことによって、今まで暗号化していなかったデータも、暗号化が可能になったことが重要なポイントです。それから、TXT(Trusted Execution Technology)をクライアント側にもサーバー側にも入れることによって、本当になりすまされていない環境にする。高度なIDの管理機能も入れますので、きちんと認証されたものが繋がるという基盤的なところはすでに手を打っています。

ただし、下のレイヤだけではすまないので、McAfeeなどとの協業も進めています。ウイルス対策のようなものも取り入れて、だんだんポートフォリオを広げていこうとしています。

一応、我々の決意としては、2012年から5年間でオンプレミスと同じような、あるいはそれ以上のセキュリティレベルを、クラウドに持ち込むことを目標に頑張っていきます。

——企業がクラウドを使う際の最大のハードルがセキュリティだといわれています。

田口●企業活動では説明責任が問われます。どう守っているか監査できないといけない。その透明性を、データセンター事業者の方やクラウド事業者がユーザーにどこまで提供できるかということが求められていると思います。

通常のIDS(Intrusion Detection System:不正アクセス監視システム )によってネットワークで守られているから、なりすまし防止は何もしていませんというのか、TXTでなりすまし防止を担保したうえで、こういうソリューションをかぶせて侵入防止をしていますといえるのか、明確にすることです。そうすることによって、ユーザーが自分たちの目標に応じた選択肢を得ることができるというのが重要だと思います。セキュリティを一概に全部強化してくださいという話をしているのではなく、セキュリティ規準を明確にしてユーザーが選べるようにすることが重要です。

——クラウドのスペックのデータベースを構築して、一般に公開しているのには、そうした理由があるのですか。

田口●「Intel Cloud Finder」ですね。ODCAを組織化した意義の1つは、あれだけの購買力を持ったユーザーが声を1つにして要求仕様を出すことで、あるべき姿をいち早く実現していくための環境を作り出せることですが、同時にユーザーにとって重要なのは、要求に合ったサービスが簡単に選べるかどうかです。したがってODCAの要求仕様書で非常に大きなボリュームを占めているのは、サービス提供者の運用やサービスの透明性のところです。「Intel Cloud Finder」プログラムでは、そのようなユーザーの要求に合ったサービスを選択しやすくすることを目指しています。事業者にとっては大変かもしれませんが、ユーザーにとってはとても大事なことです。こうしたことも、我々がコーポレートビジョンを達成する活動としては、やらないといけないことだと認識しています。

——ありがとうございました。

(データセンター完全ガイド2013年冬号)

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