成り立ちから見るフラッシュ技術のこれまでと今後【ネットアップ】

現在、ネットアップでは2機種のオールフラッシュ製品を発表しており、ひとつは「EF540」というEシリーズの最新製品(写真1)、もうひとつは新たなるOSを開発し、次世代の製品を2014 年に向けてリリースする予定である*1。本稿では、ネットアップがこれまでどのようにフラッシュ技術と向き合い、製品として取り込んできたかをご紹介する。われわれにとって「なぜフラッシュ技術が必要か、どのように有効活用できるのか」は長年の課題であり、時間をかけて、お客様の利用状況や市場動向に向き合うなかで見出した解決方法に触れる。

*1『データセンター 完全ガイド』2013 年春版 p.62-63 EF540, FlashRay

文:ネットアップ株式会社 エバンジェリスト 河西 学

写真1 オールフラッシュストレージEF540
写真1 オールフラッシュストレージEF540

フラッシュ製品の市場への出現 ?
IT as a Services の申し子

ネットアップは2013年で創業21年目を迎えるが、今、われわれはIT基盤環境の中において三度目の大きな変曲点、転換期を迎えているといえる。21年の操業期間をお客様と市場での利用状況から考えると、7年ごとに3つの時期に区分でき、転換期の様子をよくつかむことができる。

  • 第一の転換期(1993年~2000年)
    “ドット・コム”の時代
  • 第二の転換期(2001年~2007年)
    “仮想化”が浸透する時代
  • 第三の転換期(2008年~2014年)
    真の“IT as a Services”の時代へ

“ドット・コム”の時代とは、1990年代後半のインターネットブームからバブルが弾けた頃であるが、現在活躍しているAmazonなどの企業が生まれ、ネットワークとデータが大きく近付き、ストレージ記憶装置の観点から見ると、NFSというプロトコルがサーバー市場に深く浸透してきた時代である。また、NFSに加えMicrosoft社のデータアクセスプロトコルであるCIFSが実装されたことにより、市場の中では使用している端末や媒体が、UnixかWindowsかを問わず接続可能となり(マルチプロトコルの誕生)、データアクセス性が非常に高まった。また、Microsoft社の市場への浸透と共に、「ファイルサービス」がオフィスでも一般化した時期でもある。

次に、“仮想化”が浸透する時代が訪れる。2000年代初頭、ネットアップは、ひとつのコントローラー装置に対して、ファイルアクセス(NFSとCIFS)に加え、ブロックアクセスのプロトコル(FCP、iSCSI)の接続を可能とする、いわゆる「Unified」という概念と接続形態を提供し始めた。Unifiedにより、原則的にはすべてのアプリケーションからのアクセスが可能となるストレージ装置が誕生し、ストレージ装置を単純な「データの置き場」から「データをマネジメント」する、より高度なソフトウェア制御が可能なIT基盤へと変貌させた。しかしながら、2000年代中頃に至るまで、ストレージ装置はHDD(ハードディスクドライブ)によって構成され、たとえばディスクの回転数や書き込み速度など、HDDの技術に依拠、制限を受ける場面が少なくなかった。そのような中、2000年代後半頃から、いくつかの技術トレンドが、IT基盤を大きく変えることになる。

そのひとつは、CPUの利用技術が進展したことによる“仮想化”(HyperVisorによるサーバーの仮想化)の浸透である。仮想化により、多くの物理サーバーが仮想環境におけるゲストOS(P2Vという操作)に変換され、IT基盤に大きな効率化をもたらした。もうひとつは、ストレージ装置を制御するソフトウェア(OS)に、容量管理における劇的な効率化をもたらす技術として、重複排除が組み込まれたことである。同時期にデバイス側にも大きな変化の波が訪れる。それはストレージの記憶装置として、ディスクに変わり、特にキャッシュの領域で「フラッシュメモリ」が用いられるようになったことである。この「仮想化」「重複排除」そして「フラッシュ」は三位一体のごとく相性がよく、IT基盤に大きな効率化をもたらした。

三番目の“IT as a Services”の時代は「クラウド」の時代である。第二の転換期に得た上記の効率化をもたらす技術がIT基盤を「所有から利用」へと、見直すきっかけを与えた。蛇口をひねれば水が出る、コンセントにさせば電気が供給されるように、IT基盤技術が社会基盤の提供形態に近付き、データの「取り出し」と「持ち運び」がいとも簡単に行える環境を目指すようになった。また多種多様なアプリケーションからのアクセスや利用が時と場所を問わずに柔軟にできる「データマネジメント」を実現させることが課題となっている。まさに、そうした環境を生み出す起爆材となっているのが「フラッシュ技術」の適切な利用である。「フラッシュ技術」の市場への出現は、特にディスク依存であった記憶装置を効率化し、「仮想化」という技術と相俟って進展している。「フラッシュ技術」は『イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき-』(クレイトン・クリステンセン著、翔泳社刊)でいうところの、破壊的技術(disruptive technologies)のひとつとなっている。

企業ITにおける課題と、フラッシュストレージのニーズ

先に述べたように「ストレージ装置」の役割は、現在においては単なる「データの置き場」を超えて「データをマネジメントする」IT基盤を支える重要な役割を持つ。企業におけるデータマネジメントの課題は、何をおいてもコスト効率が良く管理できることである。アプリケーションからの利用、保管、アーカイブ、今、最も人気の高い「サーバー仮想化」「デスクトップ仮想化」など、同じデータを扱うのであれば、できる限り省スペース、省電力、エネルギーを使わずに済むことが大原則となる。さらに「データマネジメント」においては、バックアップとリカバリの両者を「迅速かつ簡便に」行えること、また、領域管理においては手間をかけずに管理者や、場合によっては、ストレージに慣れていない利用者であっても安心して変更操作を加えられることが肝要である。

フラッシュデバイスは、特にその成り立ちから、省スペースを実現し、特に「省電力」であることが最も大きな魅力である。フラッシュデバイスは構造上、電力を要するモーターやヘッド装置が存在せず、アクセス性能も格段に向上している。特に「仮想化」との相性がよい。たとえば仮想環境では、ゲストOSを複数作成するとき、OS部分は共通な部分となるため重複排除率が高い(排除率は最高90%以上にも及ぶ)。より小さくなったイメージは、そのデータ部分をすべてキャッシュとしてフラッシュメモリ上に格納し、速度の遅いディスク装置にアクセスする必要性をなくしてしまう。「仮想化」「フラッシュ」「重複排除」が三位一体で相性がよい、というのはこのことを意味する。3つの技術はお互いを切り離せない。仮想環境におけるゲストOSが多ければ多いほど、つまり、サーバーの集約度、OSやデータの共有度合いが高ければ高いほど、効率化の度合いは高くなる。また、消費電力も抑えることができる。

フラッシュデバイスの市場におけるニーズの高まりは、まさにストレージ技術が発展し、データマネジメントを行えるようになっていく過程で開発されてきた「仮想化」「重複排除」といった効率化の追求と軌を一にする。ネットアップでは、2009年より、拡張フラッシュメモリカードを「読み出し専用の拡張メモリ(バッファキャッシュ)」として提供する「Flash Cache」により、ゲストOSをスピーディに、効率のよい容量で提供することを可能としている。また、2012年より、HDDに加えフラッシュストレージとしてSSDを「同じストレージプール」として扱うことができる「Flash Pool」により、読み出しのみならず、ランダムな書き込み、IOPS、容量、エネルギーのいずれにおいても、効率の高いデータアクセス方式を提供している。いずれの製品もフラッシュメモリやフラッシュストレージ(SSD) を、キャッシュとアクセラレータの役割として用い、HDDを補完し、効率化を高めている。このようにネットアップは、データマネジメントの領域において、できる限り多種多様な、すべての利用形態に対応できるようにするために、「フラッシュ技術」を有効活用する術を、お客様や市場の利用状況に基づいて開発過程から学んできている。

フラッシュ技術の「ポートフォリオ」と「階層化」

われわれは20年のお客様との接点の中で、データマネジメントにおいて最も重要な切り口は、お客様の持つデータを「ワークロード(データ格納のためのリソースの利用状況を示す指標)」で捉えることだと認識するようになった。図1をご覧いただきたい。データマネジメントのワークロード指標は「容量」と「パフォーマンス」である。各々を横軸と縦軸にとることによって、市場に存在するデータをマップすることができる。

図1 ワークロードと用いる媒体の関係
図1 ワークロードと用いる媒体の関係

より多くの容量を長期にわたって要求する使用形態、たとえばアーカイブや保管(非構造化ワークロード)が対象であれば、選択するストレージ記憶装置は、SATAディスクのような大容量で低回転数のものが適切である。対して、高トランザクションでI/Oが非常に多く、低レイテンシが求められるデータベースアプリケーションデータ(構造化ワークロード)が対象であれば、すべてがフラッシュで構成される「All FlashArrays」が適切となる。このように業種業態に応じた利用形態を上記のチャート上へマップできることがご理解いただけるはずだ。したがって、どのようにデータを格納したいかを把握できれば、必然的に記憶装置として何を用いるのがよいか、が決まってくる。たとえば仮想化の領域であれば、上記チャート内では、「Hybrid SATA」のところへマップされ、前節で紹介したキャッシュとアクセラレータとしての「Flash Cache」「Flash Pool」という製品を用いることにより、フラッシュメモリ、あるいはSSDとSAS/SATAディスクを組み合わせることで、仮想環境におけるゲストOSをフラッシュメモリから「重複排除」を用いて効率的に提供し、ユーザーデータ領域はたとえばSATAディスクに格納して保管する、という「ポートフォリオ」ができる。この利用形態はすでに多くのクラウド事業者やデータセンター事業者で用いられている。これにより、消費電力はおよそ50%引き下げることができ、IOPS当たりのコストも40%以上引き下げる、といった効果をもたらしている。フラッシュ技術は、単体で用いるだけでなく、お客様の利用形態に合わせた「ポートフォリオ」によって、より多くの効果を得ることができるのだ。

フラッシュ技術の利用においてもうひとつ重要な要素は「階層化」である。たとえば、データがどこで生まれ、どのように流れ、どのように最終地点に格納されていくか、を考えてみる。つまりIT基盤を「サーバー」「ストレージ制御装置」「ディスクアレイ」というスタック構造で捉える。そのとき、各々のスタックでデータをどう取り扱えば、利用者により多くの利便性をもたらすことができるかを追求していくと「フラッシュ技術適用の階層化」に行き着く。われわれはこの階層化を“VST = Virtual StorageTier”と表現している。図2の階層図をご覧いただきたい。

図2 NetApp の自動階層化アプローチ
図2 NetApp の自動階層化アプローチ

たとえば、データベースアプリケーションを利用する場合、従来は「可能な限り多く」のHDDをひとつのプール(aggregate)で構成することを推奨していたが、フラッシュストレージとしてSSDを組み合わせたハイブリッドな構成「Flash Pool」を使用することで、ランダム リードとライト、シーケンシャル リードとライト、といったすべてのワークロードに対応可能なストレージプールを構成できる。VSTは各ワークロードに対してOSが自動的に最適なハードウェアリソースで処理するため、コストの増加やストレージ構成の複雑化を防止し、シンプルな構成で、多様なワークロードの統合環境を実現できる。また、データベースサーバーにおいて、CPUリソースを使い切るほどI/Oが高負荷なシステムに対しては、DatabaseSmart Flash CacheとFlash Pool( もしくはFlash Cache)の組み合わせを検討することが可能だ。高性能を誇るフラッシュ デバイスを高性能なサーバーに搭載することで、IT基盤全体の導入コストや設置面積を大幅に削減できることになる。これが「階層化」の効用である。さらに大切なことは、エンタープライズ領域のデータマネジメントにおける「キャッシュの永続性」は、必須の要素であり、フラッシュデバイスで確保したテラバイト級のキャッシュ領域のウォームアップには非常に時間がかかり、業務に多大な影響を与える可能性がある。現在、永続性を持ったキャッシュ機能を提供するのはネットアップだけであり、他社では実現できていないことを強調しておきたい。なお、上記の一連の技術考察については、ネットアップの日本法人のエンジニアが詳細にわたって実地検証を行い、技術文書として発表をしている*2。ぜひ、ご一読いただきたい。

*2『Oracle データベース環境におけるNetApp バーチャル ストレージ ティアの有効性と次世代の統合インフラの実現

次なるステップは

ここまでネットアップがどのようなフラッシュ製品を開発してきたか、ということをお客様や市場での利用形態を踏まえて説明してきた。最も重要なことは、データのあり方を「ワークロードから捉える」ことで、適切なデバイスの利用形態を選択できるということである。フラッシュ技術を用いる時には、「ポートフォリオ化(製品を組み合わせる)」すること、「階層化」することがより効果的である。

ネットアップとしては、実は、もうひとつ大切なお知らせがある。われわれは新しいバージョンのData ONTAPをこの初夏にかけて、リリースする予定である(すでに、RC版はリリースをしている)。「clustered ONTAP」と名付けられた新OSは、本稿でご紹介してきた数々の「ストレージ技術」に「クラスタリング技術」を加えることで、これまでにない「データマネジメント基盤」を提供するようになる。この新しい技術は、新たな運用形態をもたらし、ストレージのリソースを動的にコントロールすることができる。ぜひ、読者の皆様には図3の「YouTube」のコンテンツでその様子をご覧いただきたい。

図3 Clustered Data ONTAPが提供する3つのメリットとは
図3 Clustered Data ONTAPが提供する3つのメリットとは
http://www.youtube.com/watch?v=HbtNWHPib0E

このClustered ONTPAでは、計画的にシステムを停止することなく装置やソフトウェアのアップグレードを行ったり(計画的無停止)、オンデマンドで構成変更を行ったり、システムのリソースを移動したりすることが簡易に行えるようになる。今回ご紹介したフラッシュ技術の利用、つまりキャッシュやアクセラレータの役割として用いることも、その「一要素」として動的なオペレーションの中で用いることもできるようになる。すでに、国内のデータセンター事業者の方々に検証を開始していただいており、新しく取り入れられた技術と共に、運用効果についても高評価をいただいている。ネットアップとしては、このClusteredONTAPにオールフラッシュアレイを加え、幅広くお客様の利用状況に合わせた環境をご用意していく準備を整えている(図4)。

図4 NetApp Flash 製品のポートフォリオ
図4 NetApp Flash 製品のポートフォリオ
10月13日開催!SIerのためのITインフラビジネス戦略会議2017

資料請求・見積依頼

下記リストの13事業者の資料・見積をまとめてとれます!
「資料請求」または「見積依頼」をご利用いただいた方“全員”に、データセンター完全ガイド最新号をプレゼント!9月末まで

データセンター&ITインフラサービスの資料が、まとめてとれます!

資料
すべて
見積
すべて
データセンター&ITインフラサービス
オージス総研
(大阪ガスグループ)
北電情報システムサービス
富士通エフ・アイ・ピー
AGS さいたまiDC
エネルギア・コミュニケーションズ
キューデンインフォコム
三菱商事
エクイニクス・ジャパン
SCSK
シーイーシー
鈴与シンワート
データドック
ベッコアメ・インターネット

※会員としてログインされている場合でも、プロフィールの入力が必要です。予めご了承ください。

雑誌最新号

クラウド&データセンター完全ガイド2017年夏号

【特集】 IT基盤からビジネス価値創出基盤へ
「目的指向」クラウド/DCサービスの時代

表紙『クラウド&データセンター完全ガイド2017年夏号』

発売:2017年6月30日
定価:本体2,000円+税
判型:A4変型判(136ページ)
ISBN:978-4-295-00155-3

調査報告書

表紙『データセンター調査報告書2016』

データセンター調査報告書2016

加速するクラウドシフト~データセンター事業の戦略と今後を探る

発売:2016年9月29日
判型:A4判(436ページ)
プレスリリース
サンプル版

データセンター検索

文字列検索
1/4ラック月額
回線種類

回線月額