分散、スケーリング、高速ネットワークを備える、IDCフロンティアのデータセンター

中山一郎氏

株式会社IDCフロンティア
代表取締役社長
中山一郎 氏

IDCフロンティアは、首都圏、関西圏、北九州に加えて、2012年10月に福島県白河市に新たなデータセンターを開設した。また、2013年1月には、拠点分散型クラウドストレージサービスも開始し、ファシリティだけでなく上位レイヤのサービスにも積極的に取り組んでいる。4月に新社長に就任した中山一郎氏に、IDCフロンティアの今後の事業プランについて伺った。
聞き手 本誌編集長 土屋信明  文 柏木恵子  写真 津島隆雄

ギャンブルではなくチャレンジ

——中山さんはデータセンター事業に長年取り組まれていますが、データセンターへのニーズは、どのように変化していますか。

中山●以前のデータセンターの機能は、お客様自身が購入されたサーバーなどのIT機器を、安全に設置する場所と環境を提供するというものでした。私たちが提供していたものは、スペースと電力とネットワークだけです。それがここ2、3年で、私たち事業者がIT機器を購入してシステムを構築し、最適な運用を行い、クラウドサービスとしてITインフラを提供するようになっています。その理由は、お客様がスピードを求められるようになってきたことが一番の要因です。

——コストよりはスピードが理由ですか。

中山●私たちは料金面で競争をする企業ではないので、お客様もいかに効率よく運用するかに軸足を置かれている企業の方が中心です。

——ビジネスの特長、訴求点はどこですか。

中山●一番大事なのは、信頼性だと思っています。社内でよく言っているのは、「ギャンブルではなくチャレンジ」ということです。どういう意味かというと、データセンタービジネス、ITインフラビジネスは、お客様の情報資産をお預かりして、それを効率よく最終的なユーザーにお届けするというものです。私たちのインフラの上でお客様が事業を展開し、その先に利用者がいます。つまり、お客様のもので勝手にギャンブルをするわけにはいかない。しかし、会社としてチャレンジはし続けなければいけません。

もうひとつは、「ウォンツ」とあえて言っているのですが、ニーズの先のウォンツを汲み取ることです。お客様の業界特有の事情やパラダイムシフトをできるだけ察知して、こういうことができるのではないかと仮説も立てて提案することです。たとえば、米国での御社の業界はこのようになっている、だから1、2年後には同じようになるのではないかなど、そうした業界動向も踏まえ、必要とされるシステムやサービスを提案するように心掛けています。データセンターという箱は、一度作ると陳腐化していきます。これからはソフトウェアの時代だと思いますし、それを実現しなければいけないと思ってやっています。

また、日本では東京周辺や関西圏にデータセンターが集中していますが、その在り方を一変させたのも、IDCフロンティアであると思っています。私たちデータセンター事業者が反省しなければならない点の1つとして、大地震などの災害が起きると最も被害の大きくなる場所にデータセンターを集中させてしまったことです。そうなった背景には、緊急時に駆け付けることができなければいけないなど、いろいろな理由があります。また、システム規模の拡大に関しても、メガスケールが必要といったことには着目していませんでした。こうしたことへの対応として、IDCフロンティアはまず西日本側は北九州に、それから東日本側は福島県の白河にデータセンターを作りました。

こうした事業展開は、IDCフロンティア単独では難しかったことです。私たちはYahoo! JAPANグループ内のサービスのインフラとして大量のサーバーが利用されますし、またソフトバンクグループとして、彼らのネットワークも利用できます。これがあったからこそ、ギャンブルにならずに実現できたと考えています。

最適な分散で信頼性を提供

——信頼性や事業継続性を、データセンターを分散することで担保しているということですね。

中山●IDCフロンティアの特長は3つあります。「最適な分散」「メガスケール」「超高速なネットワーク」です。

まず最適分散については、日本は4枚のプレートにまたがった複雑な国土ですが、北九州と白河にデータセンターを置くことで、プレートをまたいだ形で常にデータを分散できますし、電力供給事業者の分散にもなります。地方に拠点を増やす場合、外気空調を採用したデータセンターを作るなら気温が低い北海道、情報ハイウェイを利用して沖縄という考え方もあります。しかし、これらにはギャンブル的な要素があります。寒すぎれば逆に暖めなくてはなりませんし、遠すぎればネットワークの帯域や通信コストが問題になります。さらに、今後30年以内に大規模な地震が起こる確率が高い場所を避けると、北九州と白河は非常に最適な立地であると言えます(図1)。

図1 高レスポンスと事業継続性を両立する拠点分散(出典:IDCフロンティア)
図1 高レスポンスと事業継続性を両立する拠点分散(出典:IDCフロンティア)

次にメガスケールですが、お客様はサービスに必要なサーバーがどんどん増えていくので、ラック1本当たりの料金ではなく、その増設まで含めてどのくらいのコストで収まるかという考え方をします。たとえば、東京のデータセンターには限られたスペースしかありません。サーバーが増えて拡張する場合、他のセンターを利用することになります。ネットワークで接続するので回線費用もかかります。しかし、IDCフロンティアの場合はそういうことを考える必要はありません。日本には約300万台のサーバーがあり、その内データセンターには100万台があると言われていますが、IDCフロンティアだけでもこの内のかなりの台数を受け入れられるだけの拡張性があります。

また、私たちはデータセンターとクラウドの両方を提供しています。お客様は両方のオプションを持って、データセンターを利用している場合でも、オープンソースで構築した、利便性の高いクラウドを開発・検証用などで利用可能です。また、一時的な需要であっても、セキュアな構内回線で結ばれた環境を利用できます。クラウドの利用者も、ビジネスの成長とともに自社のITリソースの管理が必要になれば、すぐにデータセンターを利用できます(図2)。

図2 クラウドとデータセンターのハイブリッド(出典:IDCフロンティア)
図2 クラウドとデータセンターのハイブリッド(出典:IDCフロンティア)

超高速ネットワークについては乞うご期待ということで、来年にはグループを挙げて異次元の高速ネットワークを提供したいと考えています。データセンターは、コンピューティングリソースだけあってもネットワークがなければ何の意味もありません。ITインフラの基本はネットワークで、それをきちんと提供できるのが私たちの特長です。実際、クラウドをご利用いただいているお客様に最も評価されたのがネットワークです。通信事業者を出自とする高品質な専用ネットワークをリーズナブルな価格で提供しています。サーバーがオートスケールできるというのはすでに当たり前、ネットワークでさえオートスケールできるようになります。限りないネットワークのキャパシティを持っているので、どれだけお使いいただいても結構です、というものを目指しています。

とはいえ、現在利用しているデータセンターから別の事業者に移るというのは、なかなか難しいですね。そこで、私たちは移設の障壁を低くする手段もご提案しています。通常、センターAからセンターBに移設する場合、両方にサーバーを準備してデータの移行作業を行います。このため、通常ではサーバーなどの設備が二重投資になってしまいますが、そうならないようなサービスも提供します。途中にIDCフロンティアのクラウドを非常にリーズナブルな価格で用意して、まずそのクラウドにシステムやデータをコピーし、クラウド上でシステムを運用します。その間に、センターAのサーバーで償却が終わっていないものはセンターBに移設します。センターBでの構築が終わったら、稼働を確認してそちらに切り替える。このようにして、よりよい環境への移設を支援します(図3)。

図3 クラウドを経由して移設の際の二重投資を避ける(出典:IDCフロンティア)
図3 クラウドを経由して移設の際の二重投資を避ける(出典:IDCフロンティア)

ストレージは必要な時に必要なだけ

——クラウド事業として、今年の初めから分散ストレージサービスを提供されていますが、これはどのような市場背景があったのでしょうか。

中山●まず、お客様企業では、できればストレージは買いたくない。これは皆さんおっしゃいます。というのも、ストレージのプロビジョニングは難しく、新しく購入しても、実はいつまでもつか分からないからです。データが予想以上に増えて追加ストレージの稟議を回すと、この前も買っただろうといわれる。そうした稟議の手間を省くために大きい容量を買うとなると、それが適切な容量なのかどうか分からないが投資額が大きい。だから、ストレージはできれば必要な分だけ買うのが望ましいのです。こうしたご要望に対して、スケールメリットを生かしたサービスとして分散ストレージサービスを開発し、一部のお客様への先行提供を開始しました。

北九州と白河で提供しますので、BCPとかDRということも考えずに済むようにしました。データさえあれば、緊急時にはそのときだけクラウドを立ち上げてサービスを継続できます。これは、他社ではなかなか難しいのではないでしょうか。

——データの急速な増加をもたらしている原因は何でしょうか。

中山●私たちのお客様はインターネットサービス事業者が多いこともあり、Webサイトのデータの増加もひとつの要因です。テキストだった商品説明が写真になり動画になり、検索機能も充実してきたので点数が増えていることなどによるデータの増加です。また、Yahoo! JAPANのPVは、10年前には1カ月120億PVぐらいでしたが、今では500億PVを超えているそうです。同じようなことがインターネットの全域で起こっているとすると、アクセスログも膨大なものになっていることでしょう。

——オブジェクトストレージのシステムにはいろいろな製品がありますが、Riak CSを選択したのはなぜですか。

中山●一番大きな理由は、分散技術というRiak CSの特長です。実はIDCフロンティアは基本的に分散を意識していて、データセンターも分散しています。その上で動くいろいろなものも、やはり分散の考え方を採用しています。

——ただ、データ自体を分散させることはできますが、データセンター間で仮想サーバーを移動させることは可能でしょうか。レイテンシーが低いといっても、白河から北九州に仮想サーバーを移動するには、かなりの距離があります。

中山●まだあまり詳しくは言えませんが、計画している新しい超高速ネットワークで大きく進展する予定です。たとえば千葉や埼玉といった、地図上では東京に近い場所でも、インターネットのルーティングによって、思いのほか遠回りをしていて、物理的な回線距離もあるという場合があります。東京近郊のデータセンターでも、首都圏から10msecくらいかかるというのは、それほど珍しいことではありません。それに比べれば、白河ではほとんど気にならないレイテンシーに抑えることができるようになります。

通信事業者は、通信速度を光の速度に近づけるべく、ものすごい挑戦をしています。もちろん日米間では100msec?200msecくらいの遅延はありますが、国内のネットワーク帯域とレイテンシーに関して言えば、年末までに大きな躍進を遂げるはずです。

データ活用サービスへの挑戦

中山●その他には、インフラは用意したので、その上で何をするかというところに踏み込まなければいけないと思っています。お客様から預かっているデータを、どう活用するのかという部分に対して、サービスやソリューションを提供することです。Yahoo! JAPANは膨大なデータを持っていて、それを活用していますから、その方法をグループ全体で提供するような時代が来るのではないかと思います。

データセンターにあるのはお客様のデータなので、それを勝手に活用することはできませんが、何かと何かのデータをうまくマッチングさせて、各社のユーザーによりよいものを届ける、新しい価値を届ける、新しいビジネスを生み出す、というのは可能だと思います。インターネットサービス事業者を多くお客様に持っている私たちは、極めてスタートラインに近いところにいるというアドバンテージがあります。今は何をどのように分析するとどういう解が導き出せるか、やって見せなければいけない時期だと思っていて、4年前にクラウドに進出したときよりも、さらに期待感の高いステージが待っていると感じます。

——データの活用については、法的な整備ができていないことが足かせになりそうです。

中山●それはあると思います。しかし、基本的に便利なものは法律を乗り越える、社会の方が変わっていくと信じています。今は難しいが、本当に世の中が良くなることを突き詰めれば、どこかできちんとクリアできて、突破口が開ける。だから、愚直にひとつひとつ準備をしておくことが大事です。それもあって、今年から組織の中に新しくR&D室を作りました。

私たちのグループに対する期待感もあるので、やりがいもあります。私たちが未来を見せることがとても大切だと、今さらながら思います。ITインフラは今日入って明日出るというわけにいかない。将来にわたってIDCフロンティアと一緒にやっていくことで、お客様が成長できたら大変嬉しいです。

——ありがとうございました。

(データセンター完全ガイド2013年秋号)

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